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死後事務委任契約書と遺言書の附言事項の効果の違い?

死後事務委任契約書と遺言書の附言事項の違いについて

自分の死後の手続き「死後事務」に関しては死後事務委任契約書以外でも目的を達成する事は可能です。例えば遺言書の附言事項、例えは負担付遺贈、例えば負担付贈与など、死後事務委任契約書より馴染みのある遺言書や贈与といった方法で死後事務を実現することもできます。

ただし、それらの方法と死後事務委任契約書ではいくつかの違いがありますので、今回はその違いを遺言書の附言事項との比較で考えてみたいと思います。

死後事務委任契約書と遺言書では作成目的が違う

最近の終活ブームで様々な場所で「遺言書セミナー」などの勉強会が開催されていますよね。そうした中で、もしかしたら遺言書の正しい書き方の他に「附言事項」という内容を聞かれた方もいるかもしれません。

「附言事項」は本来財産の行き先を決める遺言書において、遺言者の「思い」や「希望」「お願い事」などを記載する際に使用されたりします。一般的に多い利用方法としては家族へのメッセージを残すことでしょうか。

遺言者がどんな気持ちでこの遺言書を書いたのかやこれまでの家族として暮らしてきた事への感謝の気持ちを書くことで、多少財産分配に偏りがあったとしても本人がこういう気持ちで書いたのなら、家族仲良く喧嘩せずに遺言者の希望通りに相続を行うようにしようと、本人の家族への思いや遺産の分配への配慮を知らせることで争続を防ぐ効果が附言事項にはあります。

こうした効果のある附言事項ですが、基本的にはどのような事でも書くことができます。上で述べたように、どうしてそのような財産分配にしたのかの理由や家族への感謝の気持ちを伝えることはももちろん、自分の葬儀の方法や散骨の希望、遺品整理の際の注意点なども附言事項には書くことができます。

ですので、わざわざ死後事務委任契約書といった聞きなれない方法を使用しなくても遺言書の内容を実現される方が、遺言者(故人)の意思を汲み取って遺言書の附言事項に書かれている通りに実現してくれるなら目的を達成することは可能です。

それなら、遺言書でいいんじゃないの?と思われるかもしれません。ただ、ここで基本的な事を思い出してください。遺言書を家族へ向けて書くということは死後事務を行ってくれる家族がいる訳ですから、死後事務委任契約書はそもそも必要ないケースがほとんどです。

なぜなら、死後事務委任契約書は「信頼できる第三者へ自分の死後の手続きを依頼する」為に用意するものだからです。つまり、家族がいない方や家族や親戚の世話にはなりたくないといった方が利用するものであり、遺言書とは作成目的がまず異なってきます。

  • 遺言書の目的は自分の財産の行き先や分配方法を決めること。附言事項に記載された死後事務の希望は補足的な扱い。
  • 死後事務委任契約書の目的は自分の死後の手続きを信頼できる第三者へ依頼する事を目的として作成するもの。

遺言書の附言事項の効果は「お願い」

死後事務委任契約書と遺言書の作成される目的は上述の通りですが、この二つには効果の面においても違いがあります。既に記載している通り、遺言書の附言事項は本来法律で定められている記載事項である財産処分の方法以外の記載は附言事項となります。

附言事項は遺言書の作成目的以外の内容である為、その効果は基本的には遺族等に対する「お願い」としての効果しかありません。つまり、附言事項には法的な拘束力はなく、あくまで「こうして欲しいな」という希望であり、附言事項に記載された内容が実現されるかどうか遺言書の内容を実現する人次第というわけです。

ですので、遺言者が「私の遺骨は大好きな海へ散骨してもらいたい!」と附言事項に記載してあったとしても、家族の方が「私達はお父さんをこれからもずっと愛し、この先何十年に渡って手厚く供養したいからお墓に入れる!」といった感じで、遺言者の意思がどうであれ、実際に遺骨をどのように扱うは生きているご家族の判断によることになってしまいますので、遺言者の希望が必ず通る訳ではありません。

つまり、遺言書の附言事項の効果は「お願い」どまりということです。

死後事務委任契約書の効果は「契約」

遺言書の附言事項の効果に対して死後事務委任契約書の効果は「契約」となります。これはどういうことかというと、死後事務委任契約書を締結する際は遺言書のように遺言書が自分の希望を1人で記載すれば良いという訳ではなく、必ず相手方がいることとなります。

最初に述べた通り、死後事務委任契約書の目的は信頼できる第三者の方に自分の死後の手続き自分が元気な内に予め依頼しておくというものであり、誰かに何かを依頼する以上、必ず相手方がいることとなります。

また、死後事務委任契約書はその名の通り、「委任契約」(正確には準委任契約)でありますから、その契約内容には法律的な拘束力が発生します。例えば、委任者の方が受任者の方に対して10万を報酬として支払うので私の葬儀の喪主をしてくれないかと依頼して、受任者がそれを了承し、その内容を記載した死後事務委任契約書を作成したとするなら、受任者の方は委任者の死後、葬儀の喪主を務める義務が発生し、同時に委任者は受任者の方へ10万の報酬を支払う義務が発生するということになります。

つまり、遺言書の附言事項と違い、死後事務委任契約書にて委任者が依頼し受任者が受けた内容は死後事務委任契約書に記載された通りに実現する義務が受任者には発生することになります。ですので、遺言書の附言事項のように実現する方の意思に左右されることはない為、委任者の方の希望が実現される可能性が格段に高いのが死後事務委任契約となります。

死後事務の実現方法は状況に合わせて使い分ける

最初に記載した通り、自分の死後事務の実現方法は死後事務委任契約に限らず複数存在します。ただし、それぞれの方法にメリット、デメリットが存在いたしますので、自分の置かれている状況にはどの方法が合っているかを考えた上で選択する必要があります。

家族がいて死後事務についてはそれほど心配していない状況なら「お願い」を伝える程度の気持ちで遺言書の附言事項を活用するものいいでしょう。

おひとり様のようにそもそも自分の死後の手続きをお願いできる人が身近にいないといった場合は、信頼できる方へ依頼しておく必要がありますので、自分の死後の手続きを「どんな方法」で「どれくらいの予算と報酬」で実現して欲しいのかを、明確にする為に死後事務委任契約書を作成するといった選択をした方が良いかもしれません。

自分にはどのような方法が適しているのかが判らないといった場合はご相談ください。専門家と一緒に勉強しながら自分に合った方法を見つけていきましょう。

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