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2023.10.27

兄妹相続の手続きは時間がかかる?

おはようございます。名古屋の死後事務支援協会代表の谷です。すっかり秋らしくなってきましたね。今年はサンマが豊漁とのことですので、久々に秋の味覚を堪能したいと思います。

さてさて、本日のお題は「兄弟姉妹間での相続手続きには時間がかかる」というものです。

先日、遠方に住んでいらっしゃる相続人の方より名古屋で亡くなられた方の相続手続きの依頼を頂きました。葬儀等はつつがなく終えられて、遺品整理や自動車の処分をしようとなった段階で、相続するのかしないのかを決めかねているというご相談です。

特に孤独死したとか自殺したとかという事故案件ではありませんので、普通に遺品整理をすれば問題ない状況なのですが、なにぶん離れて暮らしていた事もあり、故人の日頃の生活状況や資産状況がどうなっているのかが相続人の方々には全くわからないとのこと。

通常こうした、故人の資産状況が分からないときに一番大事なことが「遺品整理」です。故人の室内には故人のこれまでの生活の全てが残っていると言っても過言ではありません。

ですので、相続する、しないを決めるうえで一番大事なのが故人の生活されていた室内の調査が一番大事となる訳です。

日頃の付き合いが無かった相続人として一番助かるのが、エンディングノートのような形で故人の資産状況や負債状況、各種契約先と連絡先などがひとまとめてにされている物がすぐにわかる場所に置いてあることです。

故人が生前に万が一の事を考えてこうした物を準備しておいてくれると、後の死後事務を行う相続人としては非常に助かります。

しかし、体調の急な悪化や交通事故等で亡くなったようケースではこうした物が用意されている事は珍しく、相続人としては故人の室内から必要な書類を集めていくことになります。

主に見つけるべきものとしては下記のような物となります。
・預貯金の通帳やカード、スマホ内のアプリ
・株式取引などの資料
・生命保険関係の書類
・不動産の登記済証(権利証)
・督促状関係の書類
・携帯電話やサブスク等の定期購入物に関する資料
・保険証などの行政機関へ返却する物

もちろん、上記以外にも大事な物はあるのですが、死後にすぐに行うべき手続きと相続をするかしないかを決める場合には、ひとまずこれ位の資料を集めたいところです。

こうした資料が室内から出てきたら、銀行の通帳を記帳して残高を確認したり、生命保険の会社に電話をして契約状況を確認していくことで、故人の資産状況等が分かってきます。

しかし、こうした資料がすぐに見つかるとは限りません。私も何度も経験がありますが故人の室内調査に相続人に同行して向かったところ、室内がゴミ屋敷のようになってしまっており、大事な書類がゴミに埋もれてすぐには見付けられない。

またはゴミ屋敷にはなっていないが家が大きすぎてどこに大事な書類がしまわれているのかすぐにはわからない。場合によっては、遺品整理業者に貴重品の捜索を依頼していたのに全て処分されてしまい大事な手がかりが何も見つからなかったなんてこともあったりします。

では、こうした状況の場合にどうすればよいのかというと、故人宛ての郵便物や年金の通知書に記載されている年金の振込先銀行等をひとつひとつ確認していき、残高証明等を取り寄せて故人の資産状況を確認していくことになります。

上で書いた通り、室内から故人が日頃利用している銀行の通帳等が見つかれば暗証番号がわからなくても記帳はできますので、相続人である方がATMで記帳をして故人の銀行残高を確認することができます。(記帳行為は相続放棄には影響しませんので、記帳したからといって相続放棄ができなくなる訳ではありません)

しかし、通帳すらみつからないとなると、心当たりのある銀行や高齢者の利用の多いゆうちょ銀行やJAバンクなどに総当たりで確認をすることになります。

各金融機関への預貯金の有無を確認する照会行為は相続では一般的に行われている手続きですので、金融機関としても別段面倒な手続きではありませんからドンドンしていけば問題ありません。

ただ、同じ銀行の別の支店に口座があるようなケースなら同じ銀行間で口座の有無は判明しますが、違う銀行間では情報は共有されていませんし、生命保険のようにどこかに照会をかけたら一括で調べてくれるというサービスもないですので、口座を持っているかもしれないと思われる銀行に手あたり次第照会を掛けていく必要がありますのでかなりの労力を必要とします。

そしてここからが本題となるのですが、故人の預貯金の調査を行う方が誰であるかによって銀行等へ提出する資料が大きく異なるということです。

主に銀行等で残高証明を取ろうとした際には次のような資料を銀行に提出する必要があります。
①故人の出生~死亡までの戸籍
②相続人本人の戸籍
③手続きをされる相続人の印鑑証明書と実印

①で故人が生まれてから死亡するまでの間で、相続人となるべき人が誰になるのかを確認します。
②で故人の相続人が現在生存している相続人であるかどうかを確認します。
③で手続きをされる相続人の本人確認をします。

この中で役所で取得するのに時間が掛かるのが①の本人の出生から死亡までの戸籍となるのですが、一般的な相続(親が亡くなって子供が相続する)のケースでしたら、2~3ヶ所の役場で全ての資料が揃うかと思われます。

故人が生まれてから死亡するまで同じ地域で過ごされていたような方で相続人も未婚といったケースでしたら、ひとつの役場で全て必要な戸籍が揃うこともあるかと思われます。

親子間の相続のような一般的なケースでしたら必要な戸籍もすぐに集まるのですが、これから増々増えると予想される兄弟姉妹間での相続の場合は必要となる資料が大きく異なってきます。

兄弟姉妹での相続の条件としては、故人に子供(第一順位の相続人)がいない、故人の直系の存続(第二順位の相続人)がいないことが条件となります。

つまり、第一順位の相続人も第二順位の相続人もいない場合にはじめて第三順位の相続人である兄弟姉妹に相続権が移ってくることになります。

近年は生涯未婚率の増加や子供のいない夫婦の増加、平均寿命の高齢化などから、兄弟姉妹間での相続が増えてきています。

こうした兄弟姉妹間での相続の場合でも、銀行で残高証明を取ろうとすると先に説明した通り、故人の戸籍等を提出する必要があります。

いくら銀行で自分の身分証明を見せたり、自分の戸籍と故人の戸籍を見せて両親が一緒だから兄妹なのは間違いないと主張しても銀行はそれだけでは受け付けてくれません。

銀行に兄弟姉妹からの残高証明の申請を受け付けてもらうには、兄弟姉妹が相続人になっていることを証明する必要があるからです。

つまり、先述の通り兄弟姉妹が相続人となるのは、第一、第二順位の相続人がいないことが条件となりますから、銀行に提出する資料として、第一、第二の相続人がいないことを証明できる資料を提出しないといけない訳です。

そうなってくると、故人の出生~死亡までの戸籍だけでは資料が不足することになります。
故人の出生~死亡までの戸籍で証明されるのは、第一順位の相続人である子供の有無と故人が未婚の場合なら故人の両親の死亡の有無までとなります。

第二順位の相続人は故人の両親に留まらず直系の尊属とされていますので、故人の両親が亡くなっていたとしても祖父母やさらに上の直系尊属が生きている可能性はゼロではありません。

ですので、こうした直系尊属が既に死亡していることを証明するために、故人の両親の出生~死亡までの戸籍等を取り寄せて直系尊属全員が死亡していることを証明して初めて、兄弟姉妹が相続人になっていることを証明でき、銀行が受付をしてくれることになります。

この作業が一般の方にはなかなかに大変で、戸籍を集めている途中から誰の何の戸籍を集めたら良いのか分からなくなってしまい匙を投げられる方も多くいます。

また、故人及び故人の両親の戸籍を集めようとすると相続人が住んでいる地域だけでは集まらないことがほとんどで、その多くが郵送での戸籍請求となります。

私も数多く郵送での戸籍請求を行ってきていますが、近年は郵便の土曜配達が無くなった事もあり、遠方の役所へ戸籍の請求をする場合は返事が返ってくるまでに10日~14日間ほど時間がかかるようになってきました。

そして兄弟姉妹間での相続では故人の直系尊属の戸籍も必要となり父方、母方の戸籍をそれぞれ郵送で請求するとなると戸籍が集まるまでに2ヶ月近くかかることも珍しくはありません。

こちらがどれだけ最短で戸籍の発行請求をしたとしても郵便の往復時間と役所での処理期間はどうしても時間が掛かる訳で、こちらとしては待つしかない時間が多くなってしまう訳です。

こうした待ち時間をできるだけ短縮するためにも、相続人のお近くで取れる戸籍関係については葬儀の際に一緒に持ってきてもらうなどのお願いもするのですが、それでも短縮できる時間はわずかですので、やはりエンディングノートや銀行の通帳などを故人の室内から見つけるのが大事となってきます。

士業に依頼すれば手早く必要な戸籍集めて貰えると思われるかもしれません。もちろん戸籍の発効請求にも慣れていますし、士業だけが使用できる職務上請求書といった特別な用紙もありますので、一般の方よりは上手に手早く集めることは可能です。

しかし、士業の手続きとは別の郵便の往復時間や役所での処理時間は士業側ではなんともできない部分ですので、兄弟姉妹間の相続では時間を要することになります。

今回は兄弟姉妹間の相続では残高証明1通取るにもかなりの時間が必要となるというお話しでした。

兄弟姉妹に限らず相続手続きや死後事務をされる遺族が困らないように、日頃からの話し合いや親族が遠方に住んでいる場合はエンディングノート等の準備、おひとり様で死後事務を行う方が不在の場合は死後事務委任契約の準備など、それぞれに合った方法で準備をしておくと万が一の時に手続きをされる方が困らなくて済みます。

相続や死後事務のご相談は死後事務支援協会までお気軽にご相談くださいね。

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