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2025.06.17
日本で遺骨を焼き切ることは可能なのか?
近年、火葬後の遺骨を「焼き切る」という選択肢が話題になることがあります。しかし、実際に遺骨を完全に灰にすることは可能なのでしょうか?この記事では、「焼き切り」の実態と、なぜ日本の火葬場では遺骨が残るのかについて詳しく解説します。
遺骨の焼き切りとは何か?
「焼き切り」とは、火葬炉の温度を通常よりも高く設定し、遺骨が完全に灰化するまで焼却する方法を指すことがあります。しかし、日本の火葬場ではこの方法が一般的ではなく、ほとんどの施設で遺骨が残るように火葬が行われています。
海外では、火葬後に遺骨がほぼ灰になるケースもありますが、日本の火葬場では遺骨を拾う「収骨」という儀式があるため、完全に灰化するまで焼くことは通常行われません。
なぜ日本の火葬場では遺骨が残るのか?
日本の火葬場では、遺族が遺骨を拾う「収骨」の儀式が重要視されています。そのため、火葬炉の温度や焼却時間は、遺骨が適度に残るように調整されています。
主な理由
- 宗教的・文化的な背景
日本では、遺骨を拾い、骨壺に納めることが故人への敬意とされています。そのため、遺骨が完全に灰になるような火葬は一般的ではありません。 - 火葬炉の設計
日本の火葬炉は、遺骨が適度に残るように設計されています。高温で長時間焼却すると、炉自体が損傷する可能性があるため、焼き切りを行うことは難しいのです。 - 法律・自治体の規制
一部の自治体では、遺骨を完全に灰化することを禁止している場合があります。これは、遺骨の供養や管理の観点から、遺族が遺骨を持ち帰ることを前提としているためです。
焼き切りを希望する場合の選択肢
「焼き切り」を希望する場合であっても、日本においては焼き切りは行われていません。ただ、焼き切りを希望する理由が遺骨を持ち帰ることができないといった理由の場合はいくつかの選択肢があります。
- 粉骨処理を行う
火葬後に遺骨を粉砕し、粉骨することで、より細かい灰状にすることが可能です。粉骨業者に依頼すれば、遺骨をパウダー状にすることができます。
焼き切りを希望する理由がお墓を管理維持できないなどの理由なら、粉末状にして場所を取らない形でご自宅の仏壇等で手元供養に付することができます。
近年は、遺骨を手元供養用のアクセサリーに加工してくれる会社なども存在します。 - 散骨を検討する
遺骨を持ち帰らず、海洋散骨や樹木葬などの方法で自然に還すことも選択肢の一つです。 - 収骨せずに焼骨を火葬場で処理してもらう
西日本の地域に多いですが、もともと火葬後の遺骨を部分的にしか持ち帰らない地域においては、事前に火葬場に申請することで焼骨を遺族が骨壺等にいれて持ち帰らなくても、火葬場に全ての焼骨の処理をお願いすることが可能な地域があります。
収骨なしを選択する場合のメリット・デメリット
単身高齢者が増える中、お墓の承継者がいなくなることから事前に墓じまいをされている方も増えてきています。また、将来的にますます単身高齢者が増える事が予想されており、そうした場合にはやはり墓守等が不在のことから、自身が死亡した後の焼骨について悩まれている方も多く、そうした方々にとっては「収骨なし」も選択肢のひとつとなってきています。
まずは、収骨なしを選択した場合のメリット・デメリットについて確認しましょう。
収骨なしのメリット
- 遺族が遺骨を管理する必要がなく、お墓の承継者がいない場合などに有効
- 事前に墓じまいをしておくことで無縁墓になって菩提寺に迷惑をかけることがなくなる
- 散骨や納骨を行わず、供養料やお墓に掛かる費用を減らせる
- 単身高齢者の方であっても事前に死後事務委任契約等を結んでおくことで収骨なしを選択できる
収骨なしのデメリット
- 遺族の意向と合わない場合があるため、自分だけで決めずに事前に他の親族の意向も確認しておくことが重要
- 一部の自治体では収骨を義務付けている場合があるため、必ずしも自分の住んでいる地域で収骨なしを選べるわけではない
- 遺骨を後で必要とする場合に、取り戻せない点に注意が必要
- 火葬場に焼骨の処理を依頼した場合でも、自治体ごとに焼骨の処理の仕方が異なるため、焼骨の行方が気になる場合は、事前に自治体に確認しておく必要がある。(自治体所有の合祀墓に入れられる、自治体提携のお寺で合同供養される、産廃業者へ引き渡される等)
まとめ
日本において「焼き切り」は行われておらず、基本的に収骨するか、収骨せずに火葬場に処理を依頼するかのどちらかとなります。
また、収骨なしを選択したくても、地域においては収骨が義務付けられており、火葬場に焼骨の処理を依頼できない地域も多くあります。
遺骨の取り扱いは故人への最後の敬意を示す大切なプロセスです。収骨しない選択を検討する際は、家族で十分に話し合い、納得のいく形で故人を送り出すことが大切だと言えるでしょう。