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2025.06.18
直葬は「寂しい葬儀」ではなく、新しい選択肢へ
おはようございます。名古屋の死後事務支援協会代表の谷です。名古屋は6月なのにうだるような暑さでもう大変。この時期はまだまだ体が暑さに慣れておらず、熱中症になりやすい時期でもありますので、ご注意くださいね。
さてさて、本日は「直葬」について。
当協会では単身者の方の死後事務委任を請け負う関係上「直葬」での葬儀の施工も良く行います。直葬と聞くと宗教的な儀式を行わない何か寂しいイメージがあるように感じるかもしれませんが、近年の直葬は必ずしもそうではありません。
以前までは、直葬で葬儀を行いたいと考えていても、葬儀業者の葬儀プランに載っておらず、葬儀担当者へ相談してはじめて裏メニュー的に受け付けてくれるといった感じでしたが、近年は大手の葬儀社でも「直葬プラン」を表に出してきていたりと直葬が浸透してきているように感じます。
近年増えている直葬とは?
「直葬」という言葉を聞くと、簡略化された葬儀や故人を偲ぶ時間が少ないというイメージを抱く人も多いかもしれません。しかし、近年では直葬が単なる簡素化ではなく、葬儀の選択肢のひとつとして確立しつつあります。
直葬とは、通夜や告別式などの儀式を省略し、火葬のみを行う葬儀スタイルです。親族や親しい友人が集まり、故人を静かに見送るシンプルな形式が特徴です。従来の葬儀に比べて費用や時間の負担が少ないことから、従来の葬儀プランと同様に選ばれるようになってきました。
直葬が増えている背景
- 直送の選択が増えている理由にはいくつかの社会的背景があります。
- 1.費用を抑えたいというニーズ
葬儀の平均費用は約119万円といわれていますが、直葬なら20~30万円程度で済むことが多く、経済的負担を軽減できるため選ぶ人が増えています。 - 2.ライフスタイルの変化
現代では仕事や家庭の事情などで忙しく、大規模な葬儀を準備する時間的余裕がない人も多くいます。そうした状況から、短時間で故人を送る方法として直葬を選ぶケースが増えています。 - 3.核家族化の進行
昔に比べて親族との付き合いが希薄になり、葬儀に参列する人数も減少傾向にあります。そのため、大規模な葬儀を行う必要性が薄れ、少人数でも執り行える直葬が選ばれるようになっています。 - 4.身寄りのない高齢者や疎遠な親族の増加
高齢社会の進行に伴い、身寄りのない高齢者や、親族と疎遠な関係にある人が増えています。そうした場合、従来のように親族が中心となる葬儀を執り行うことが難しくなり、簡素な直葬を選択せざるを得ない状況が生まれています。また、行政による「福祉葬」や「公営葬儀」でも直葬に近い形式が採用されることが多くなっています。 - 5.宗教観の希薄化
昔は葬儀において宗教的な儀式が欠かせないものでした。しかし、近年では宗教的な価値観が希薄になり、形式よりも合理性を重視する傾向が強まっています。特に若い世代では宗教的な儀式に対する関心が薄れ、「故人を偲ぶ気持ちがあれば、儀式にこだわらなくてもよい」と考える人が増えています。そのため、直葬のようなシンプルな葬儀形態が受け入れられるようになっています。 - 6.コロナ禍による影響
コロナ禍では、葬儀の形態が変わりました。感染対策として、大勢が集まる通夜や告別式を避ける傾向が強まり、家族葬を選ぶ人が増えたことも直葬への抵抗感を薄めた要因のひとつと考えられます。
直葬のメリット・デメリット
直葬にはさまざまなメリットがありますが、注意すべき点もあります。
メリット
・経済的負担が少ない
・短時間で葬儀を終えられる(喪主や家族の負担が少ない)
・親しい人だけで静かに送れる
・形式に縛られず自由な形での見送りができる
デメリット
・故人と過ごす時間が短い
・宗教的な儀式を省略するため、後悔することがある
・菩提寺とトラブルになる可能性がある(埋蔵や納骨を拒否される)
・他の親族から直葬で行ったことを責められるといったトラブルがある
直葬は「寂しい」葬儀ではない
直葬と聞くと、病院から直接火葬場に運ばれて火葬されてしまうようなイメージがありますが、それは違います。
日本では、死亡後24時間は火葬することができないため、火葬場に運ばれるまでにご自宅や葬儀会館、遺体安置ホテル等で遺体を保管する時間が生まれます。
直葬の場合も同様で、直葬を行ってくれる葬儀社の遺体安置所や故人の自宅で安置されたうえで火葬場へと運ばれることになるため、この待機時間の間で家族や親族が故人と面会することも可能となります。
当協会でも単身高齢者の方からの死後事務委任契約に基づいて葬儀の手配を行いますが、直葬の場合であっても、生前の故人の意向を確認したうえで、親族やご友人に焼香をしてもらったり、花や写真、応援していたスポーツ選手のユニフォームを飾ったり等を火葬場に運ぶ前に行っていたりします。
もちろん、直葬であるからといって、宗教者を呼んではいけない訳ではありませんので、宗教者を呼んでお勤めをしてもらうこともあれば、戒名をつけてもらうこともあります。
ですので、「直葬=寂しい」というイメージを持つ人もいますが、実際にはそうではなく、直葬は、葬儀業者の用意した葬儀プランといった形式にとらわれずに本人や家族が希望する葬送の方法のひとつということです。
直葬という選択肢を尊重する社会へ
葬儀のあり方は時代とともに変化しており、その選択肢が多様化するのは自然な流れです。直葬は「簡略化」ではなく、故人や遺族にとって最適な方法のひとつになりつつあります。
今後は、直葬に対する理解が深まり、より多くの人が納得のいく形で故人を送ることができる社会になっていくのではないでしょうか。