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2025.12.31
子供がいる場合の死後事務委任契約の可否について
おはようございます。名古屋の死後事務支援協会代表の谷です。
今年もあっという間に大晦日となってしまいましたね。後半は契約やら大掃除やらに追われていたようでほんとうに12月はあっという間に過ぎていってしまった感じがします。
さて、本年最後のお仕事は、身寄りのある方の死後事務委任契約でした。基本的に死後事務委任契約は身寄りのない方が契約されるケースが多いのですが、近年は様々な事情から身寄りのある方であっても死後事務委任契約を考えるケースが増えてきています。
では、そもそも身寄りのある方は死後事務委任契約を結ぶことはできるのか?という疑問があります。これについては、普段のご相談でも受ける質問ではあるのですが、結論から言えば「契約は可能」です。
死後事務委任契約は、委任者(依頼者)と受任者(死後の手続きを行う人)との契約ですので、委任者と受任者双方で納得できているのでしたら、委任者側に身内がいたとしても契約は問題なくすることは可能です。
ただ、実務上では、公的団体や金融機関等が行っている死後事務委任契約においては、直系卑属(子供や孫)がいる方は契約できないとしているところもあるため、そうした団体へと先に相談されているような場合は、子供がいる場合は死後事務委任契約はできないものと思われてしまっている方もいます。
なぜ、公的団体や金融機関等が行う死後事務委任契約においては、直系卑属がいないことを契約の条件としているのかというと、一番の理由は依頼者(委任者)にお子さんがいる場合はトラブルが起きやすいことが原因にあげられます。
簡単な例で言うなら、死後事務の依頼として葬儀や納骨の依頼を受けており、委任者死亡後に契約書に従って葬儀や納骨を済ませたのに、音信不通だったお子様が後から出てきて遺骨を返せと難癖をつけてきたといったケースですね。
特に直系卑属の場合は、相続人でもあるため依頼者の財産についても権利を有していますし、死後事務委任契約の契約者としての地位も委任者死亡後には相続人として、その地位を引き継いでいることになるため、まったくの無関係とはなりえないため、対応が難しくなってしまう事情があります。
反対に同じく親族といっても疎遠な兄弟姉妹といった方しか相続人としていない場合は、遺言書や契約書をしっかり準備しておくことで、仮に難癖を付けてきたとしても遺言者や契約書を盾に依頼者の意思の実現を強行してしまうことも可能となるため、死後のトラブルの発生を防ぎやすいことになります。
ですので、変にトラブルが起きる可能性がある直系卑属のいる依頼者の場合は、一部の団体や金融機関では依頼を断っているのが現状でもあります。
ただ、最初にも言った通り直系卑属がいる場合であっても委任者と受任者で納得できる状況であれば契約は可能ではあります。
ですので、多くの民間の高齢者等終身サポート事業者と呼ばれる身元保証団体や死後事務を専門に扱う機関においては、直系卑属がいる場合であっても契約自体は可能となっているかと思います。
それでも、直系卑属がいる場合は上記で示したようなトラブルが起きる懸念はあるため、契約前にお子さん方にも契約についての意向を確認してもらう等、事前に根回しが可能な親子関係の方であればお子さんやその他の親族にも、死後事務委任契約を検討していることを伝えてもらうようにしている事業者が多いのではないかと思われます。
ただ、依頼者の中には親子関係が破綻してしまっておりそもそも「ここ何十年と連絡を取っていない」「どこに住んでいるのかわからない」「生きているのかどうかもわからない」といった依頼者もいたりしますので、こうしたケースでは、仮にお子さんのような直系卑属がいた場合であっても連絡自体を取ることができません。
反対に言うなら、お子さんがいても生死不明や音信不通であるため、死後の手続きについて不安があるから死後事務委任契約を第三者と結びたいとなるとも言えます。
このようなケースは珍しくはありませんので、それはそれで事案に対応した遺言書や死後事務委任契約書を準備することになります。事業者としても連絡先がわからないお子さんを探し出してまで事前の確認を取るようにとは言わないかと思います。
ですので、事業者としては普段から連絡を取り合っている親族がいる場合は、後日の紛争を防ぐ意味で事前に契約について親族の方へも伝えておいてもらい、親族関係が破綻してしまっているようなケースでは無理に確認を取ってもらうことまではしないといったケースが多いのではないでしょうか。
一番困るのは、中途半端に関係性が残っている場合で、普段は親の面倒なんて一切見ないくせに、財産だけは相続したいから、遺言書の作成や死後事務委任契約には口を出してくるといったケースです。
事業者としては、後日のトラブルを防ぐ意味でお子様へと確認を取るように勧めることになりますが、お子様が契約について良く思わないような場合は、依頼者も無理に契約を進めることができなくなり、契約手続きが中断してしまったという話しも良くきくところではあります。
当事務所でも、こうしたケースは取り扱いますが、一番大事なのは契約者たるご本人の意思が固まっているかどうかです。お子さんがいたとしても契約を断固として進めたいと考えているのかどうかがはっきりしているのでしたら、それに合わせた準備を事業者としては行っていくことになりますが、当然リスクの増加に応じて手続き費用も上がることになってしまいますので、一番はお子さんも含め親族の了解が取れていることではあります。
お子さんがいる状況で死後事務委任契約を結びたいという場合は、そこに至るまでに様々な経緯や事情があるかと思います。
一言に親子関係と言っても、まったく同じ人生を歩んできている家族は存在しませんので、各依頼者の事情に併せて契約を考えていく必要があるのが死後事務委任契約でもあります。
契約の際は各事業者の方とよく相談して進めてくださいね。
死後事務に関するご相談は名古屋の死後事務支援協会までどうぞ~。





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