国や市町村は死後事務を行ってはくれない
国や市町村は身寄りの無い方の
死後事務を行ってくれるのか?
死後事務のご相談を受けていると、身寄りの無い方が亡くなった場合の死後事務は市町村で行うと思っている方がいらっしゃいますが、これは一部は正解で、ほとんどが間違いです。
ホームレスの方が路上で亡くなったようなケースと同じで身寄りの無い方が亡くなった場合も遺体については市町村で火葬してもらえます。
しかし、これはあくまで遺体をそのままにしておく訳にはいかない為の処置であり、火葬の前に葬儀をあげてくれたり、遺品整理を市町村が代わりに行ってくれるということはありません。
ですので、「最終的にはお国がなんとかしてくれる」という考えは間違いであり、何も準備もせずにいると万が一の時に周りに多大な迷惑と負担を強いることになってしまいますので、しっかりと準備をしておきましょう。
※近年は地域の社会福祉協議会を中心に事前に死後事務委任契約を締結した上で、おひとり暮らしの方の死後事務を社会福祉協議会等が行うケースはあります。
死後の備えとは何?
では、実際のところ身寄りの無い方が死後の備えを何もしていなかった場合はどうなるのでしょうか?
死後の備えといってもピンとこないでしょうから、具体的な例をあげるなら、
・遺言書をかいてある
・死後事務委任契約書を第三者と結んでいる
・エンディングノートに必要なことをまとめてある
・手帳などに親戚の連絡先や死後の希望などをメモしている
・友人や知人に口頭で希望を伝えてある
などが一例になるでしょうか。
遺言書と死後事務委任契約書を作成してあるなら、充分な準備がされていると言えます。
エンディングノートや手帳などのメモに関しても、必要事項をきちんと記載しておき、かつ、必要とする人が万が一の時にすぐに確認できるようになっているのでしたら、対策としては及第点といえるでしょう。
友人や知人へ希望を伝えておくというのは、なにもしないよりは、、、といった感じで対策としては不十分となりますが、伝えておく友人や知人が信頼できる方で、死後の手続きに関しても役場や親族と連携してくれる関係の方なら問題ありません。
身寄りの無い方が死後の備えを何もしていないとどうなるの?
身よりの無い方が死後の備えを何もしていないとどうなるのか?
万が一死亡した場合、自分の遺体はどうなる?
死亡した場所や状況にもよって遺体の取扱いが変わります。
室内で孤独死していたら?
近年増加している高齢者の孤独死(孤立死)のケースですと、まずは警察によって死亡に事件性がないかの調査をされた後に、遺族等の調査が行われ、遺族がいる場合は引き渡しをされます。
身よりの無い高齢者の場合
身寄りの無い高齢者の場合は、市区町村にて民生葬として直葬等で火葬されることとなりますが、すぐに火葬されるとは限りません。
身よりが無いといっても、それは亡くなった状況から判断しているだけで、実際にはお子様やご兄妹がいるかもしれません。
当然、市町村でもそうした方がいる可能性を考えて、すぐに火葬する訳ではなく、一旦警察や葬儀社の遺体安置室にて、ご遺体を安置し、その間に相続人や親族を探すこととなります。
親族がすぐに見つかり、遺体を引き受けてくれれば問題ありませんが、親族間でトラブルなどが起きたりすると、決着がつくまで遺体は安置室等に置かれたままになってしまい、場合によっては死後1年近く安置されているようなケースもあります。
こうした状況を避ける為にも、自分に万が一の事があった場合に、それに対応してくれる人を事前に決めておいたり、必要に応じて「死後事務委任契約書」などで、ご遺体の引取りや葬儀の手配をしてくれる方を決めておくと、誰にも迷惑をかけずに、死後の手続きを進めることが可能となります。
遺品整理は誰が行ってくれるのか?
自分に万が一の事があった場合に、自分の部屋は誰が片付けてくれるのか?大家さんに迷惑をかけることにはならないのか?と心配されている方は多いと思います。
実際に死後の備えを何もしていなければ、大家さんをはじめ水光熱費や電話会社などに多大な迷惑をかけることになります。
身寄りの無い方のケースですと、親族がいない又はいても協力を仰げないといった状況が多く、当然遺品整理の手配や費用の捻出などは期待できません。
そうした場合の多くが、故人の室内に残った家財類は誰も片づける者もなく、そのまま放置されてしまうこととなります。
こうした場合は、大家さんや管理会社によって室内の明渡し手続きを行ったり、入居者が孤独死した場合や家賃を滞納した場合に備えて保険や保証会社と提携しているケースもありますので、そうした制度を利用しながら室内の家財を整理していくこととなります。
ただし、これは大家さん側としてはなんのメリットもなく、できれば避けたい状況でもありますので、自分に万が一の事があった場合に備えて、家族や親族に代わって遺品整理等を行い、部屋の明渡しをしてくれる方を決めておくのが最善となりますね。
いずれにしても、市区町村で行う死後事務は最低限の物だけであり、遺品整理や財産整理などは一切行ってはくれないのが実情です。
生活保護を受けている場合は自治体で死後事務を行ってくれる?
上でも述べている通り、国や地方自治体は身寄りの無い方の火葬はしてくれますが、死後事務までは行ってくれません。
これは生前に自治体から生活保護を受けていた方も同様で、医療費などが無料になるのだから葬儀や死後事務も全て自治体が面倒を見てくれるだろうというのは甘い考えです。
たとえ生活保護を受けていた方であっても死後事務を国や自治体が行ってくれるという事はありませんので、ご自身で準備をしておく必要があります。
生活保護を受けている方ができる事前の準備
とは言え、生活保護を受けている方の場合は日常の生活だけでギリギリという事もあり、身元保証契約や死後事務などを第三者に依頼したくても利用料を捻出できないということも考えられます。
でも、上で記載してある通り、自分がこのまま死んでしまったとしても国や自治体は死後事務を行ってはくれない。特に賃貸物件で生活しているような場合は遺品整理を行ってくれる方がおらず長年お世話になった大家さんに迷惑を掛けてしまうかもしれない。そんな不安がありますよね。
確かに、利用料が支払うことができず民間のサービスを利用できないということは考えられます。しかしだからといって、何もできないという訳でもありません。生活保護を受けているご本人が何も準備せずに亡くなってしまうと賃貸物件の大家さんは故人の荷物を勝手には処分できません。
なぜなら相続人がいるかもしれませんし、相続人がいない場合でも本来は相続財産管理人の選任申請を裁判所に行った上で手続きを進めていくのが本来の道筋の為、遺品整理が完了するまでに多大な労力と時間、費用を費やすこととなってしまいます。
でも、事前にご本人と大家さんとの間で死後事務委任契約書のようなしっかりした書面ではなく、念書や合意書のような簡単なものでも構いませんので入居者が亡くなった場合は入居者の家財処分を大家に一任するとする文章を一筆差し入れておくだけで、家主側としては正当な権利のもとで遺品整理を行うことができるようになります。
費用などは大家さんの持ち出しになってしまうかもしれませんが、次の募集までの期間を短くすることが可能となり、難しい手続きで頭を悩ます必要がなくなるだけでも大家さんにとっても大助かりとなる訳です。
もちろん、本人自身が日常の生活でゴミを溜めずに掃除も適度に行っておくことで大家さんの負担はぐっと下がります。できる範囲での準備を心掛けましょう。
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