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2021.10.01

成年後見人は死後事務を行ってはくれない?

おはようございます。死後事務支援協会代表の谷です。

緊急事態宣言も全面解除され、コロナ患者も減少してきて、やっとコロナ迷宮の出口に光が差してきた感じですね。ここで落とし穴に落ちないようにする為にも基本的な感染対策は続けていきましょう!

さてさて、死後事務委任契約についてですが。死後事務のご相談を受けている際にこんな質問を受けることがあります。「将来、認知症になって成年後見人がついたら死後の手続きはその人が全部やってくれるんですよね?」

さて、どうなんでしょう?

最近よく耳にする「成年後見人」、判断能力の衰えてきた高齢者の方の財産管理や身上監護を行う方となります。これは、家族がなる場合や士業のような専門家がなることも多いですが、成年後見人の選ばれ方によって大きく変わることとなります。

既に、認知症等で判断能力が失われてしまっている方の場合は、家庭裁判所によって「法定後見人」という方が選ばれます。

これは、親族などから申し出によって、家庭裁判所にて、ご本人にとって最適な方を後見人として選任するタイプですね。後見人には家族がなることもあれば第三者の専門家がなることもあります。

もうひとつが、「任意後見人」。こちらは、ご本人が元気なうちに、自分が判断能力を失った時に備えて予め、自分で自分の事を託せる方を選んでおく方法です。

ですので、任意後見人も家族がなる場合や専門家がなる場合、どちらもあることは法定後見人と一緒ですが、自分が信頼する方を事前に決めておくことができる部分が法定後見人とは大きく違うところとなります。

では、本題に戻って成年後見人はご本人(成年被後見人)が亡くなった場合に、葬儀や遺品整理、行政機関への届出などはできるのでしょうか?

これは、法定後見人、任意後見人ともに死亡届のように一部できる業務はありますが、一般的に死後事務として望まれる大部分については、「出来ない」という答えとなります。

正確に言うなら、「死後事務は成年後見人の業務ではない」というのが正しい表現となるでしょうか。

成年後見人の業務は、ご本人の身上監護や財産管理が業務範囲です。端的に言えば、成年後見人が成年後見人として活動できる期間は、本人が存命中の間だけです。

つまり、ご本人が亡くなった段階で、成年後見人としての基本的な業務は終了してしまうため、成年後見人としては死後の手続きを行うことはできないこととなります。

成年後見人の一般的なイメージとしては、高齢者の方のお困りごとを幅広くサポートするというイメージがあるかと思います。

そうしたイメージの中には、高齢者が亡くなった後の葬儀や埋納骨、遺品整理といった、亡くなった後に行わないといけない手続き全般もサポートしてもらえるんだと思われている方がけっこういます。

どうして、こうしたイメージがついてしまっているかというと、成年後見人に家族がなっている場合は当然、家族が家族として、死後の手続きをおこなったりしますし、専門家がなった場合でも、家族がいない方の死後の手続きを放置しておくわけにはいかないとして、業務範囲外であっても、関係機関と連絡しあってなんとか手続きをしてきたという部分もあったりするからと思われます。

しかし、先ほども述べたように、死後の手続きは基本的には成年後見人の業務ではないため、家族以外で死後の手続きまでやってくれている成年後見人はあくまで例外的な対処となります。

では、成年後見人は一切、死後事務はできないのか?というとそうとも言えません。先ほどあげた、ふたつの成年後見人のうち、自分で将来成年後見人になってもらう方を事前に決めておく「任意後見人」のケースでしたら、任意後見契約を結ぶ際に、「死後事務委任契約」も一緒に結んでおけば、任意後見人として活動していた方が、死後の手続きも引き続き行ってくれることとなります。

これは、任意後見人が死後事務を行うことができるというわけではなく、任意後見人の方もご本人が亡くなった段階で任意後見人の業務が終了することは、法定後見人と変わりありません。

ただ、事前に「死後事務委任契約」を任意後見人の方と結んでいることで、任意後見人の方が、任意後見終了後、新たに「死後事務受任者」に就任して、死後事務受任者として活動することができるようになるということです。

なんで、いちいちそんなメンドクサイことをするんだろう?と思われるかもしれませんが、ご家族が死後の手続きを行う分には、何か問題があってもご家族間の問題ということになります。

しかし、第三者が就任することの多い「死後事務委任契約」では、権利関係を曖昧にしたまま行ってしまうと大きなトラブルへと発展してしまいます。

例えば、親戚が亡くなったと聞いて尋ねてみたら、縁もゆかりもない第三者が勝手に葬儀をあげて、遺骨を菩提寺とは関係ないお寺に埋葬していた、なんて聞いたらどう思われますでしょうか?

普通に考えれば「赤の他人が、なんで勝手な事をしているんだ!!」と、関係者の方々は当然、激怒することでしょう。たとえ、それが裁判所で選任された法定後見人であったとしてでもです。

しかし、そうした死後の手続きがご本人の意思に基づいて行われていたというなら、話しは変わってきます。もちろん、ご家族やご親戚の想いをないがしろにしていい訳ではありませんが、大事なのはあくまで「本人がどうしたいか」です。

自分の死後にこうして欲しいというのは、言ってみれば本人の最後の希望でもあります。皆さんが良くご存じの「遺言書」もそうですよね。

遺言書は主に財産関係に関する本人の最後の希望であり、これは法律で定められている「法定相続分」などよりも優先して、その意思の実現が図られるよう法律で保護されたものでもあります。

これと同じように、遺言書では書けない死後の希望を記載しておくのが「死後事務委任契約」であり、こちらも本人の最後の希望を叶える強い効力を持つ書面となります。

こうした本人の意思を確認することができる書面としては、最近は「エンディングノート」のような、死後の手続きに必要なことをまとめておく書籍や冊子も多数販売されています。

もちろん、こうした書籍等を利用するのも有効な方法ではありますが、エンディングノートはご自身が記載するだけの物でもありますから、あくまで「メモ」以上の効果はありません。(法的な拘束力などは生じない)

死後事務委任契約は、事前に選んだ信頼できる方と結ぶ「委任契約(準委任)」であり、契約である以上はそこに法律的な効果が発生します。

つまり、死後事務受任者となった方は、勝手には契約を放棄することはできないこととなり、エンディングノート等より、はるかに強い実現効果が望めることとなります。

当然、そうした法的効果を発揮させるために、誰が何をどういった方法でと、細かに依頼内容や報酬が決められることとなりますので、依頼した側、依頼を受ける側の権利義務が明確となります。

そうした、本人の意思を実現するための、正式な書面があることで、たとえ第三者であっても本人から正式な依頼を受けたという事で、ご親族との考えと異なっていたとしても、何憚ることなく業務を遂行することが可能となるわけです。

話しが長くなりましたが、まとめると

死後の手続きは、基本的に成年後見人は行うことはできない。
ただし、事前に死後事務委任契約を結んでおくことで、その意思を実現してもうらうことは可能となる。

※法定後見人の場合は、本人の判断能力が失われた後で裁判所にて後見人を選任するため、法定後見人と事前に死後事務委任契約を結んでおくということは難しいこととなります。

そうした場合は、死後事務委任契約だけを信頼できる方へとお願いしておくことで、法定後見人の業務が終了した段階で、死後の手続きからは、事前にお願いしておいた方が、死後事務受任者として手続きを進めていくということも可能となります。

いずれにしても、死後の手続きで不安や心配がある場合は、一度ご相談くださいね。

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