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2021.10.03
不動産を市町村に寄付する代わりに解体や遺品整理を任せることはできるのか?
おはようございます。死後事務支援協会代表の谷です。眞子様のご結婚正式に発表されましたね。おめでとうございます。末永くお幸せに。
さて、結婚とは正反対の死後の手続きの話題ばかりで恐縮ですが、今回も同じく死後の話題です。(笑)
死後事務に限らず、遺品整理のご相談でも良くある話しなのですが、相続した不動産を市町村へ寄付したいというご相談。
不動産を寄付したいというだけなら、土地の利用状況や換金した上での寄付といったご提案は可能なのですが、ここである相談というのが、家屋の解体や遺品整理を行う費用がないので、市町村に不動産を寄付する代わりに、そうした家屋の解体や遺品整理を市町村にお願いすることはできないのか?という相談です。
これが個人間の話しで、例えばお隣同士のお話しなら、「ま~、自宅の敷地も広がるし、それ位は負担してもいいかな」ということはあるかもしれません。
しかし、相手が市町村などの場合にはなかなかそうはうまくいかないのが実情です。
こうした相談の多くは、一人暮らしの高齢者が住んでいた古い家屋で、家財やゴミがぎっしりというケースが多く、遺品整理や家屋の解体に相当な金額が必要と見込まれるような状況です。
当然、相続人としては、自分達の持ち出しはなるべく少なくしたいと考えるわけで、親族で誰も利用しないなら市町村へ寄付して、遺品整理や家屋の解体はそっちに任せてしまおうと考えている場合ですね。
では、そうした希望は叶うのか?というと、まず無理です。
不動産というと高い資産価値を有しているようにも思えますが、本当に価値のある不動産でしたら、親族だって遺品整理や家屋解体の負担をした上で売却手続きをすれば、利益が見込めるはずです。
しかし、そうせずに市町村に任せようと考えるということは、遺品整理や家屋を解体した上で売却したとしても、利益や労力に見合わないと考えているからに他ならないわけです。(立地や土地の形状など資産価値が低い)
最近良く耳にする言葉でいうなら資産価値の少ない、むしろマイナスにもなりうる「負動産」というわけですね。(資産価値や利用価値の高い不動産なら、市町村でも建物などが残っていても寄付を受け付けてくれる可能性はあります。)
当然こうした負動産ともいえる物件は、市町村側でもノーサンキューな訳で、あげると言われてもいらないわけですね。
もちろん、寄付自体はウェルカムな訳ですから、相続人が不動産の遺品整理や家屋解体を行った上で、売却してお金に代えた上でなら、喜んで受け取ってくれるでしょう。
もちろん、そこまでするなら敢えて市町村に寄付なんて考えには至らないのでしょうけれども(笑)
結論をいうなら、利用価値の低い不動産を市町村が遺品整理や家屋の解体の費用負担をしてまで、寄付を受ける可能性は限りなく低いということになります。
もちろん一律に不可ではありませんので、一縷の望みを掛けて役場の窓口に相談するのは問題ありません。
相続等により取得した土地所有権の国庫に帰属に関する法律
上の相続した土地を市町村に寄付できるかという話題と似ていますが、今年(令和3年)の4月に「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」なるものが成立いたしました。
これは、端的に言えば、いらない土地を国へ渡す制度です。
近年、相続によって、望まぬ土地を取得してしまい、その管理や税金などで相続人の負担が増加して、結果的に管理不全の土地が問題となっています。この管理不全の土地問題の解決策のひとつとして成立したのがこの法律な訳です。
「なんだ、土地を手放す方法ができたんじゃないか!それなら、じーちゃんが住んでいた家ごと国へ渡してしまおう!」とは、いきません。
詳しくは、法務省の「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫貴族法)」をご確認頂くとして
この法律は、相続した不動産の税金や家屋の解体費用に困っている相続人を救済するために制定された法律ではありません。
どちらかというと、所有者不明の土地や管理不全の土地が増えるくらいなら、費用を相続人に負担させた上で、しかたがないから国へ帰属させるか、というものです。
ですので、相続した土地を国庫へ帰属させることができるといっても、なんでもかんでも国が受け入れてくれる訳ではなく、国庫へ帰属させるための要件が厳しく決められています。
相続人として、一番身近な理由でいうなら、「土地を持ってても固定資産税や家屋の管理費で出費が痛いから国へ渡してしまいたい」という理由は基本的にアウトです。
市町村への寄付の際もそうですが、国庫へ帰属させるにあたり、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地に関しては、国庫へ帰属させることはできません。
具体的にあげられている却下要件としては、次のようなものとなります。
1、建物の存する土地
2、担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
3、通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
4、土壌汚染対策法上の特定有害物質により汚染されている土地
5、境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地
上記の「却下要件」以外にも「不承認要件」もあり、国庫へ帰属させるための要件はかなり厳しく決められています。
そもそも、遺品整理の現場では「建物」があるのが当然ですから、最初から国庫へ帰属させる要件からは外れてしまっていることになりますね。
では、建物が無くて、土壌汚染やその他の権利関係も綺麗なら国庫へ帰属させられるのか?「土地を持っていても、管理や固定資産税が出るだけで、手放せるなら手放してしまいたい!」と考えている方も多いと思います。
却下要件や不承認要件に該当しなかれば、国庫へ帰属させる可能性は出てきますが、もうひとつクリアしないといけない壁「負担金」の問題があります。
要件審査を経て法務大臣の承認を受けた者は、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10年分の土地管理費用相当額の負担金を納付しなければなりません。
つまり、土地を国へ差し出すのにさらにお金も支払わないといけないということですね。
こうなると、もう「お金を払って引き取ってもらう」負動産そのものともいえますが、民間ではタダでも買い手がつかない土地というケースもありますので、そうしたケースでは、国へお金を払ってでも帰属させることができるということには意味が出てくるのかもしれません。
いずれにしても、資産価値の低い土地を手放すことはなかなか簡単にはいかないということですね。