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2024.07.18
死後事務委任と任意後見契約はセットで契約しないといけないのか?
おはようございます。名古屋の死後事務支援協会代表の谷です。そろそろ名古屋も梅雨明けしそうな感じで夏本番という雰囲気がしてきました。
事務所が名古屋港に近いこともあり先日の「港まつり」の花火も良く見えましたが、歩いて行ける距離なのに実際に行ったのは何十年前だったかな、、、、、。すぐに行ける距離だと逆に足が遠のきますよね(笑)
さてさて、本日はここ最近増えてきた相談について。
当協会では、サービス提供エリア外の方からの相談も電話やメールでお答えしていますが、そうした相談の中に最近増えてきたと感じる相談内容があります。先日も60代の男性からの相談でこんな相談が寄せられました。
(相談内容)
「ひとりで生活しており、子供も兄妹もいません。万が一の時に備えて死後事務をやってくれる会社を探しているところです。私自身はまだ60代ということもあり、とりあえず死後事務委任と遺言だけ作ろうかと思っているのですが、いろんな会社から任意後見契約を一緒に結ぶように言われています。死後事務を頼む場合は任意後見契約もセットで結ばないといけないものなのでしょうか?」といったご相談です。
結論から言えば、死後事務委任と任意後見契約はセットで結ぶ必要はありません。ただ、依頼者の状況によっては任意後見契約を結んでおいた方がサービス提供業者としては死後事務に着手しやすいという事情はあります。
サービス提供事業者が任意後見契約を勧める理由はいくつかあります。
① 死後事務や身元保証契約は80代前後の高齢者が入院や施設入所の際に結ぶ事が多いため、任意後見契約を結ぶことで、依頼者が認知症になった場合でも財産管理や身上監護が行いやすい。
② 移行型と呼ばれる任意後見契約を結ぶことで、依頼者が認知症になる前から財産管理に着手することができるようになり、依頼者の意思が比較的はっきりしているうちから財産状況の整理がしやすくなる。
③ ②の財産管理契約を結ぶことで、依頼者が認知症の診断を受ける前でも財産管理の業務として事業者が報酬を受け取る事ができるようになり、事業者の利益に繋げやすい。
④ 依頼者に万が一の事があった場合に「死亡届」を任意後見人(任意後見受任者)名義で出せるようになる。
などです。
特に、④の死亡届については、死後事務を開始する一番最初に必要となる部分でもあり、この部分でつまずくと遺体の保管期間の延長などで葬儀業者へ支払うドライアイス費用代が上がってしまったりと面倒なことになります。
ご相談者の中、場合によっては士業の先生の中でも勘違いされている方がいますが、「死後事務委任契約」を結べば、家族の代わりに死後事務受任者が死亡届を出せると勘違いされている方がいますが、これは間違いです。
死亡届は戸籍法の87条で届出義務者が明確に定められています。
上記のように、死亡届が出せる人は決まっており、その中には「死後事務受任者」という文言はありません。つまり、死後事務委任契約を結んでいたとしても、死後事務受任者は死亡届が出せないということです。
もちろん、死後事務受任者が死亡届を出せなかった場合でも、親族や賃貸物件の管理人、病院長や施設長等も死亡届を出せますので、実務の現場では死後事務受任者が死亡当時の状況に応じて、死亡届を出せる人に依頼して死亡届をしているのが実情です。
ただ、死後事務委任契約を結ばれる方の多くが親族がいない方や親族に頼れない方ということも多く、契約時に病院や施設に既に入院、入所している状況なら、予め病院や施設側に万が一の時は死亡届の記載をお願いしますと頼んでおくこともできますが、比較的若い方が契約者となる場合は以前としておひとりで暮らしている状況もあります。
契約者の方が賃貸物件でひとり暮らしをしている状況でもし亡くなったようなケースですと、死亡時に関わりのない病院や施設では死亡届の記載について依頼はできませんし、公営住宅ではない一般の賃貸住宅の場合ですと管理会社や大家さんとして死亡届をすぐに書いてくれるかというなかなか難しいものがあります。(なんで入居者の家族でもなんでもないのに死亡届かかないといけないの?という反応は当然ですよね)
そうした孤独死のような状況や旅行中での不慮の事故等の場合にすぐに死亡届をださないといけない状況にあって、死亡届を出せる人を探すのは非常に手間な作業となります。
契約時に死亡届を出せる人がいない、又は死亡届を出せる人に協力を得るのが難しいような状況の方が依頼者の場合は、あらかじめ任意後見契約を結んでおくことで、万が一の際はすぐに死亡届を出せるというメリットが任意後見契約にはあります。
2019年の法改正前までは、死亡届は任意後見人しか出せず、任意後見受任者は死亡届は出すことができませんでした。
しかし、法改正により、いまだ認知症等が発症しておらず、任意後見監督人が付されていない場合(任意後見が始まっていない状況)であっても、任意後見を受けているだけの状況(任意後見受任者)の方でも死亡届を出せるようになりました。
これにより、士業等が任意後見契約を結ぶ際などは死後事務委任契約を同時に結ぶことが多いので死亡届が出しやすくなるというメリットがあります。
こうしたメリットは士業が任意後見契約を結ぶ場合だけでなく、身元保証会社のような高齢者等終身サポート事業のサービスを提供する事業者にとっても大きな意味をもっており、死後事務委任だけを結ぶよりも任意後見契約を一緒に結んで貰った方が業務をスムーズに進めることができるようになる訳です。
ですので、依頼者としては死後事務委任契約と遺言書だけ準備したいと考えていたとしても、サービス提供会社が万が一の事を考えてスムーズに業務に着手できるように任意後見契約を一緒に提案してくるということが良くおきます。
ただ、任意後見契約は必ず公正証書で作成しなければいけないため、契約時に作成費用が増加することもありますし、事業者によっては任意後見契約を結ぶ名目で契約書の作成費用とは別にかなり高額な契約料を請求してくるケースもありますので、その点には注意をして欲しいところですね。
高齢者等終身サポート事業については、先日「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」が出されてもいます。
ガイドラインの最後には利用者が事業者を判断するためのチェックリストも付いていますので、こうしたチェックリスト等も活用しながら自分に合った事業者がどれなのかを検討してみてくださいね。
最後に、高齢者等終身サポート事業者ガイドライン策定される際に高齢者等終身サポート事業者が戸籍法第87条第1項第3号の「家屋管理人等」として死亡届の届出資格者に含まれるのかが検討されることとなりました。
将来的には、死後事務受任者のような高齢者等終身サポート事業者が死亡届を出せるようになるかもしれませんね。
死後事務・相続・遺言等のご相談は名古屋の死後事務支援協会までお気軽にご相談くださいね。