ブログ
2022.01.28
自筆証書遺言+死後事務委任契約で万が一に備える
おはようございます。名古屋の死後事務支援協会代表の谷です。
オミクロン株の勢いが止まらないですね。私が担当している高齢者の中には持病のためにコロナワクチンを接種できない方もおり、感染力の強いオミクロン株に非常に強い危機感を持たれています。
そのため本来受診しないといけない定期の診察にも感染を恐れて病院へいけないということが続いており、非常に憂慮すべき事態となっています。感染は今週から来週位がピークのようですのでより一層の感染対策を心掛けていきましょうね。
さて、今回は死後事務委任の契約形態についてのお話しです。
先日こういったご質問を頂きました。
「自分はひとり身のため、遺言や死後事務委任契約で万が一に備えておきたいと考えているが、公正証書で遺言や死後事務委任契約を作成したら、内容を気軽に書き換えられないのではないか?」というご質問です。
どうしてこういう心配をされるのかというと、遺言や死後事務委任契約というものは相続が発生してはじめて効果が発生する性質があるからです。
もっと端的に言うなら「死んだら効果が出る書面(契約)」、「生きてる間はなんらの効果もない書面(契約)」ということです。
ですので、最近は終活などで身近になってきた「遺言書」、これも遺言を書かれた方が死なない限りはあくまで希望を書いてある書面でしかなく、なんらの効果も発揮しないものです。
反対に言うなら、なんらの効果も発揮していない書面であるので、生きてる間は何度でも自由につく直しができるということでもあります。
死後事務委任契約も基本的には契約当事者間で合意するなら何度でも作り直しは可能となります。
ただ、何度でも作り直しは可能といっても、どういった形態で遺言書や死後事務委任契約書を作成したかによって、作り直しやすさが変わります。
どういうことかと言うと、一般的に利用される遺言書としては、「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の2種類があります。
公正証書遺言は、公証人役場というところで、公証人の面前で証人2人とともに自分の遺言の希望を述べて、それを聞き取った公証人が公正証書遺言という形で遺言書を作成するというものです。
公正証書遺言は、「公証人が作成する」「証人2人がいる」などの要件から、公証人や証人への報酬や作成に関する時間がかかるため、一度作ると何度も気軽に作り直しができるというものではありません。
もちろん、費用と手間を考えなければ何度でも作り直しは可能ですが、頻繁につくり直すということは、まだ遺言に関する内容が固まっていないということでもありますので、そうした場合は別の形態で準備しておいた方が良いこともあります。
それが2つ目の「自筆証書遺言」です。自筆証書遺言の特徴は「自分ひとりだけで作成できる」「証人はいらない」「掛かる費用もなし」と非常にリーズナブルにしかも思い立ったその日にでも作成できるというお手軽さが特徴です。
極端な話し、紙と鉛筆、印鑑と遺言を作成する方の「やる気」さえあればすぐに作成できます。
これまで私たち士業は遺言書と言えば「公正証書遺言」と言ってきました。これは、自筆証書遺言は作成の容易さの反面、無効な遺言も多いという問題を抱えていたからです。
公正証書遺言は公証人というプロが作成し、かつ証人2人を伴って作成しますので、基本的には遺言が無効になることはありません。(遺言者が認知症だったということで裁判で争われるケースはありますが)
しかし、自筆証書遺言は、誰の関与も必要としないことから、有効な遺言とされるには厳格な要件が法律で定められています。
遺言書の原案(下書き)を弁護士や行政書士などの専門家に依頼した上で作成するならいいのですが、ご自身だけで作成しようとすると、「あいまいな内容」「日付や印鑑といった要件の不備」「保管場所の問題」といった、公正証書遺言では発生しないトラブルが出てきます。
ですので、こうしたトラブルを避けるためにも士業の先生方は「遺言は公正証書」でと口を酸っぱくしていってきたのですが、この点については一部制度が改正され、法務局で自筆証書遺言を保管してくれる制度が始まりました。(公証人役場と法務局は別物です)
法務局での自筆証書保管制度については下の法務省のページをご覧ください。
「自筆証書遺言書保管制度(法務省)」
自筆証書保管制度によって何が変わるのかというと、まず、自筆証書遺言が方式違背で無効になることがなくなります。
保管制度を利用する際はご自身が法務局に赴いて、自分の遺言書であることを伝えて保管の申請を行いますが、その際に自筆証遺言が有効となる形式的な確認をしてもらうことができます。
例えば、印鑑が押されていなかったり、日付の記載が無かったり、記載方法(自書してないなど)が間違っているような場合は教えてもらえるということですね。つまり、第三者のチェックが入るということです。
注意点としては、第三者がチェックしてくれるといっても、チェック内容は自筆証書遺言として有効であるかどうかの形式面のチェックであって、記載されている遺言の具体的な内容や文言の使い方まではチェックされないということです。
ですので、専門家から見るこの遺言だと後々親族間でトラブルになりそうな内容であっても、自筆証書遺言としての体裁が整っていれば、保管制度の利用に問題はなく敢えて指摘はされないということです。
次に、「検認手続きがいらない」。これまでは自筆証書遺言を遺族等が見つけた場合は、見つけた遺言書はまず「家庭裁判所」で「検認」という手続きを行う必要がありました。
この検認手続きを経ていないと預貯金の解約手続きなどが行えないのですが、検認は申請してから実際に完了するまでに各種書類を整えた上で1ヶ月程時間がかかりますので、結構面倒なものです。
こうした遺言を執行する上でも検認手続きがいらない「公正証書遺言」が便利ではあったのですが、この点についても法務局での保管制度を利用することで、検認手続きは不要となります。
また、これまで自筆証書遺言は自宅などで保管されているケースが多かったのですが、自宅保管などの場合は、「遺言書を見つけてもらえない」「誰かが遺言書を破棄したり、改ざん、隠匿する恐れがある」など、保管の方法にも問題がありました。
しかし、法務局での保管制度を利用することでこの心配もなくなります。
最後に保管制度の利用料金が安い!
遺言書1通の保管手数料は3,900円という安さで公正証書遺言に比べて非常に使いやすい値段設定です。
長くなってしまいましたが、公正証書遺言、自筆証書遺言の保管制度、これはどちらが優れているというものではなく、遺言書を作成される方の状況に応じて作成しやすくなった(選択肢が増えた)ということです。
例えば、高齢の寝たきりの方であっても意思表示さえできれば、公証人が病院まで出張して遺言書を作成してくれます。
こうした制度は、自筆証書の保管制度ではありませんので、この点をみれば寝たきりの方や自書できない方にとっては、公正証書遺言が選択肢となります。
しかし、まだまだ元気で、いますぐどうこうなる心配はないけれど、万が一に備えて遺言書を作っておきたいという方にとっては、今後何十年と続く人生の中で、遺言書の内容を書き換えたいと思うこともあるはずです。
そうした場合は、費用も手間もかかる公正証書遺言よりも、自分で作成できて利用料も安い保管制度の方が、作り直しが気軽にできるという面では利便性が高くなります。
同じことが「死後事務委任契約書」にも言えます。
残念ながら死後事務委任契約書には遺言書の保管制度のような、契約書を公的機関で預かってくれるという制度はありません。
しかし、死後事務委任契約書は必ず「公正証書」で作成しないといけないというものではなく、一般的な契約書であっても有効に成立するものです。
つまり、死後事務委任契約書においても、公正証書遺言と保管制度の関係と同じで、高齢になり生活様式も大きく変わることはないという段階であれば、公正証書で死後事務委任契約書を作成し、まだまだ元気だけど、突発的な事故や病気などは予測できないから、万が一の備えだけはしておきたいというなら、一般契約書で死後事務委任契約書を作成すればよいということになります。
一般契約書での死後事務委任契約書であれば、死後事務を依頼される委任者と、死後事務を頼まれる受任者の合意があればいつでも作り直しが可能ですので、公正証書で作成する場合に比べて作り直しは容易となります。
最初のご相談内容に戻りますが、遺言や死後事務委任を検討されている方が50代、60代と若い方で、念のために準備だけしておきたいとい場合なら、公正証書で作成するのではなく、自筆証書遺言(法務局保管制度)+一般契約書での死後事務委任契約書にしておくと、作り直しや解約などはしやすいでしょうね。
公正証書遺言、自筆証書遺言、公正証書での死後事務委任契約書、一般契約書での死後事務委任契約書では、内容が正確で有効に成立している限りは効果に違いはありません。(実務面では、公正証書での死後事務委任契約書の方が一般契約書での死後事務委任契約書よりも信頼度は高いように感じますが、、、)
公正証書や保管制度はあくまで選択肢です。利用される方の希望や状況に応じて上手に使い分けることが大事ですね。
当協会のご契約者にも持病の無い健康な40代や50代といったご依頼者の方もいます。そうした若い方々の中には、最初から全て公正証書で作成する方もいれば、最初は自筆証書遺言+一般契約書の死後事務委任契約書で備えて、一定年齢になったら公正証書で作成し直すという考えの方もいます。
万が一に備えて準備はしておきたいけれど、どんな方法が自分に合っているのかわからない。そんな場合は是非ご相談ください。一緒に考えていきましょう!
死後事務のご相談は名古屋の死後事務支援協会までどうぞ。ご連絡お待ちしておりま~す。
2022.01.21
配偶者の相続手続き~自身の死後事務委任契約へ
おはようございます。名古屋の死後事務支援協会代表の谷です。
気づいたら1月ももう後半戦ですね。今年は新年から忙しく動いていたためブログを書いている余裕がありませんでした。(💦)改めまして、本年もよろしくお願いいたします。
終息したかと思われるコロナもオミクロン株の急拡大で余談をゆるさない状況です。蔓延防止措置も発令されていますが、まずは自己防衛が大切ですね。
さて、今回は障がいのあるお子さんを抱えていらっしゃるご両親と死後事務委任契約についてとなります。
一般的に死後事務委任契約を検討される方は、おひとり暮らしの方が多いのですが、中にはこういった障がい者を抱えているご両親というケースもあるよということを知ってもらいたいと思います。
私がが最初にその方を訪問したきっかけは、奥様の相続手続きと死後事務のサポートで伺いました。死後事務委任契約は生前にご本人様から依頼を頂いて、死後事務を行う家族がいなくても手続きが進むように準備しておく方法です。
反対に言えば、死後事務を行うご家族がいらっしゃるなら死後務委任契約を結ぶ必要はないとも言えるのですが、近年の超高齢社会では、死後事務を行いたくても年齢や病気、体力的な問題など様々な事情から家族が行えないケースもあります。
そうした死後事務、主に役場への届け出や年金手続き、公共料金の契約関係の切り替え、名義変更などを相続手続きとまとめてサポートするのは死後事務を専門に扱う士業の得意とするところでもあります。
ですので、今回の方もそうしたサポートを含めて相続手続きを進めていく予定だったのですが、訪問した際にご家庭には障がいを抱えているお子様がいっらしゃるとお聞きしました。
障がいといっても重度のものではなく、以前は普通に日常生活を送っていた方ではありますので生まれながらの障がい者という訳ではありません。
ただ、病気になられてからはご自宅から出かけることもなく、日常の生活もご両親に頼る形となっていました。これまでは奥さんと一緒に介護をされていたようですが、その奥様も亡くなりご主人に掛かる負担が一気に増加してしまったのが現状です。
そうした中で相続手続きや死後事務の件で頻繁にご自宅へ伺い、ご本人の体調などもお聴きするのですが、ご主人も80歳を超える高齢でもあり、決して体調が良いとは言えない状況。
お会いする度に疲労が濃くなっているのが分かります。普通なら地域の社会福祉協議会なども参加してその方のサポートをするところなのですが、お話しを聞くとお子さんの介護で手がいっぱいで、ご自身の介護保険の申請などは一切行っていないとのこと。
つまり、地域高齢者のセーフティーネットとも言える社会福祉協議会(名古屋では、いきいき支援センターとも言います)が現状を正確に把握していない可能性もあります。
このままでは、ご主人の命も危ぶまれる状況でしたので、社会福祉協議や保健センターなどへも連絡を行い、ご主人とお子様の現状の把握と対策を依頼しました。
とりあえずの危機は脱したかと思われますが、奥様の相続手続きを通して家族関係や親戚関係を確認したところ、ご主人に万が一の事があった場合に、死後事務を行ってくれる方がいないことが判明します。
本来ならお子さんがその役を担うところですが、お子様も障がいを抱えており、到底そうした手続きが出来る状況ではありません。
しかし、この状況で奥様の相続手続きが終わったので、はい、お終い。とする訳にはいきません。
なぜななら、この状況でご主人に何かあった場合、ご主人の死後事務を行う人がいないのはもちろんのことですが、残されるお子さんも放置されてしまうことになります。
もちろん社会福祉協議会をはじめ行政も動いてくれていますが、ご主人が亡くなってしまった後に障がいを抱えているお子さんがひとりで生活するのは難しく、やはりどこかの施設等へ入所することが予想されます。
そうした場合に問題となるのが「費用(お金)」です。
幸いご両親にはそれなりの蓄えもありますので、ご主人に万が一の事があった場合でもその財産をお子さんへ適切に相続させることができれば、より良い環境でお子さんに過ごしてもらうことができます。
しかし、現状のままではそうした対策が何もなされていないため、ご本人のこと、残されるお子さんのこと、どちらも心配が尽きない状況でした。
では、どのように対策するのか?今回の方は非常に家族関係がシンプルであり、ご主人に万が一のことがあった場合でも相続人はお子さんしかいない状況です。
極端な話し、何も対策しておかなくても財産はお子さんへと相続されます。しかし、法律上はお子さんが相続することとなっても、実態上は、誰かが銀行の払い戻しや自宅の名義変更などをしないといけません。
これに関してはご本人に遺言書の中で遺言執行者を指定してもらえば解決できます。
また、本題のご主人様自身の死後事務についても、死後事務委任契約を締結することで、お子様に何か判断させることもなく、ご本人の意思に基づいて事前に、葬儀の方法や納骨の場所、その他各種手続きについて決めておくことができます。
このように、お子様への財産移転は「遺言」で、ご自身の死後事務については「死後事務委任契約」によって準備しておくことで、障がいをお持ちのお子さんの負担を大きく減らすことができます。
この方の場合は、これ以外にも日常生活のサポートをするために見守り契約なども締結させて頂き、お子さんの入院手続きやご本人の介護保険申請のサポートなどを行っております。
障がいをお持ちの方の親なき後の問題は深刻ではありますが、事前の準備を通して対策できる部分もあります。悩まれた場合は地域の社会福祉協議会や保健センターなどへ相談してください。おひとりで悩まれるよりきっといい解決策が見つかるはずです。
もちろん、私たちでお手伝いできることがあれば、お気軽にご相談ください。
死後事務委任契約は、契約して即発動する契約ではありません。5年、10年と長い付き合いとなることを予定した契約となりますので、日常生活のちょっとしたことから相談できる体制を作っておくことで、信頼関係の構築にも繋がります。
長い付き合いとなる死後事務委任契約ではなにより信頼関係が一番大事な部分となります。
最後になりましたが、本年も死後事務支援協会では、ご依頼者の方に安心して任せて頂ける対応を心掛けてまいります。
死後事務のご相談がございましたらお気軽にご連絡くださいね。
2021.12.11
死後事務委任契約のトラブルについて
おはようございます。名古屋の死後事務支援協会代表の谷です。外に出てみると街はクリスマス雰囲気で年末の足音がヒタヒタと聞こえてくるようです。(嘘だっ!と叫びたい)大掃除の予定を立てないとですね。
さてさて、本日は死後事務委任契約とトラブルについてです。2、3年前に比べれば「死後事務委任契約」という言葉をよく耳にするようになったと感じます。
少し前までは「死後事務委任契約」と言っても士業の間でも「?」という方は珍しくありませんでした。しかし、最近は相続を扱う先生なら大抵の方が知ってるという位まで認知度が上がってきているのではないでしょうか。
近年は社会福祉協議会なども高齢のひとり暮らしの方を対象として死後事務委任のサービスを提供するなど、これまでは民間でしか行われていなかった部分にも公的なサービスが広がる兆しを見せてきています。
公的なサービスが提供される背景には、おひとり暮らしの高齢者の増加や今後より一層増加すると見込まれる単身者の方々の増加があると言えるでしょう。
つまり、これまで身元保証をはじめとしておひとり様への対策を民間に任せていたけれど、いよいよ行政側としても無視できないレベルになってきているのではないかともとらえられます。
また、これまで身元保証をはじめとして死後事務委任契約などを民間が主導して行ってきたことから生じるトラブルの増加もその背景にあるかもしれません。
今回は、死後事務委任契約で生じるトラブルとその原因について解説してみたいと思います。
死後事務委任契約と主なトラブル
死後事務委任契約で発生するトラブルの主な内容は下記となります。
◆運営会社の破産や倒産、事業中断
◆預託金の返還トラブル
◆本人が望まない寄付をさせられる
◆親族からの苦情
これらのトラブルが発生する原因としては、死後事務委任契約が抱える根本的な法的性質が挙げられます。
そもそも死後事務委任契約ってどんな契約なの?
死後事務委任契約と発生するトラブルを理解する上でまず知っておかなければいけないのが、「死後事務委任契約ってどういう契約なの?」ということです。
死後事務委任契約を簡単に表現すると
「自分が死んだ後に必要となる手続き(葬儀、行政への届け出、遺品整理、各種契約の清算と解約など)を生前に自分が信頼する第三者へ依頼しておく契約」となります。
もっと簡潔に表現すると、「死後(に必要となる)事務(を予め)委任(する)契約」ですかね。
この手続きを依頼する「信頼する第三者」とは、家族もその対象となりますが、一般的には家族以外の第三者が指定されるケースが多いでしょう。
なぜなら、死後事務委任契約を利用される方というのは、自分の死後の手続きを任せられる家族がいない方が利用される事がほとんどだからです。
近年は死後事務委任契約の広まりとともに死後事務を扱う専門家も増えてきており、利用範囲としては、天涯孤独の方ばかりではなく、「遠方に住む高齢の親族に負担をかけたくない」や「疎遠な親族の世話になりたくない(迷惑をかけたくない)」など、本来なら死後の手続きを行ってくれる親族がいる方でも利用を検討される方が増えてきています。
つまり、死後事務委任契約とは、おひとり暮らしの方などが自分の死後に発生する手続きを、自分の意思と自分の財産を利用して予め準備をしておく契約といえます。
自分自身の死後の手続きを本人が予め準備することで、親族がいない方はもちろん、例え親族がいる場合であっても、葬儀や相続手続きなどで大変な思いをする必要はなくなりますので、超高齢者社会の日本では非常に使い勝手の良い終活方法のひとつとも言えるでしょう。
死後事務委任契約のトラブルが発生するメカニズム
一見使いやすそうに見える死後事務委任契約ですが、実際の現場では沢山のトラブルが発生しています。その主なトラブルが上で挙げたような項目なのですが、ではなぜトラブルが発生するのか?
トラブル発生の最大の要因は「契約と開始までの期間の長さ」です。
死後事務委任契約は上でも述べたように、本人が自分の死後に備えて予め契約しておくものとなります。しかし、この契約はお店でなんらからのサービスを受けるような場合とは時間的な間隔が大きく異なります。
例えば、レストランで食事をする場合、食事の提供や各種サービスは注文した後すぐに行われますよね。そして、食事後にすぐに支払いも行いますので、サービスの提供と支払いはほぼ同時になされていることとなります。
しかし、死後事務委任契約は自分が死んだ後の事を予め決めておく契約ですので、契約したからといってすぐに手続きが始まるわけではありません。
もちろん、緊急の手術に備えて契約するケースもありますので、絶対に無いわけではありませんが、基本的には自分が元気な内に将来に備えて契約するケースがほとんどですので、死後事務委任の契約と死後事務委任契約が執行されるまでの間には数年~数十年のタイムラグがあるのが普通でしょう。
契約から執行までの期間が長期間に及ぶと何が起きるかというと
・依頼者の希望の変化
・依頼者の生活状況の変化
・受任者の経営状況の変化
などが起きるケースがあります。
例えば、当初は死後事務を依頼する先として最善と思っていた依頼先が長年付き合っていくうちに関係が悪化したり、または、より良いサービスを提供する会社が現れたりします。
また、契約時は将来に渡って依頼者の生活は安定していると予想していたけれども、病気などで支出が嵩み、死後事務に必要となる費用を確保できなくなる可能性もあります。
これは、依頼者側だけではなく、死後事務の依頼を受けた受任者側でも生じることで、場合によっては受任者側の経営状態が悪化して倒産や事業中止といったことも発生する可能性があります。
つまり、死後事務委任契約を結んでからその契約が履行されるまでの期間が長ければ長い程、不確定要素が増大することとなり、契約時には予想していなかったようなトラブルが発生する可能性が高くなるということですね。
ですので、死後事務委任契約とその主なトラブルの要因は「契約と開始までの期間の長さ」にあると言えるわけです。
実際のトラブル事例
でが、もう少し詳しく実際のトラブル事例を見てみましょう。
トラブル1
死後事務受任者側の破産や事業中止
死後事務委任契約で起きるトラブルで依頼者にとって被害が大きくなりやすいのが、死後事務の依頼を受けた受任者側の倒産や事業の中止です。
過去には身元保証や葬祭支援として死後事務を行っていた「公益財団法人日本ライフ協会」が倒産したことは有名な事件です。
このケースでは、公益財団という信用力の高さから全国規模で利用者がおり、利用者が受けた損害は甚大なものとなりました。
利用者は契約時に身元保証や葬祭支援(死後事務)に必要な費用を「預託金」という形で財団へと先払いしていましたが、財団が破産してしまったことで、当初予定していた死後事務はおろか生前の身元保証も受けられず、あげく預託金も返還されないという最悪のケースとなった事例でもあります。
ここで学ぶべきことは、たとえ国から認可された公益財団法人であっても将来に渡って絶対安全ではないということです。
神ならぬ人の身で運営を行っているのですから、運営する人が悪い事を考えてしまえば、当然こういった事態が発生することは依頼する側でも十分検討しておかないといけないということですね。
トラブル2
預託金返還トラブル
次の事例として多いのが預託金返還トラブルです。
これは何かというと、先ほどから述べているように死後事務委任契約とその履行までには相当な期間が空くこととなります。ですので、その期間の間に新たなサービスが出てきたり、契約者間での関係の悪化ということは当然起こり得ることです。
預託金返還トラブルで多いのは、身元保証会社が身元保証に併せて葬祭支援(死後事務)を行っているケースです。身元保証会社では、高齢者の身元保証を行い、万が一の際は葬儀などの葬祭支援もまとめて行うという形で、契約時に一括して契約するケースが多くあります。
そうした場合に、身元保証や葬祭支援に必要となる費用を予め身元保証会社へと「預託金」として預けるケースがこれまでは主流でした。
ただ、こうした身元保証に関するサービスは近年ん爆発的に伸びてきており、各社特色を出したサービスを各種提供してきています。
そうしたサービスの中には、自分が今利用している身元保証サービスよりサービスの内容や利用料が魅力的な物もあったりすると、消費者側の心理としては「今の身元保証会社をやめて、こっちのサービスに切り替えたい」と思うのは自然のことですよね。
そうなった場合に発生するのが、「預託金返還トラブル」です。
現在利用している身元保証会社をやめて、次の身元保証会社へ切り替える場合は当然、現在利用している身元保証会社へ預けているお金は返してもらい、返してもらったお金を次の身元保証会社との契約費用や預託金に充てたいと考えるのが普通です。
利用者側としてはあくまで、必要になった際に備えて預けているだけのお金(預託金)ですから、使用していないなら返してもらって当然な訳です。
しかし、身元保証会社の中には、この預託金を契約時の事務手数料などど併せて売上としてカウントしている会社もあるようで、一度預かった預託金の返還に難色を示したり、預託金の一部しか返還してくれない会社があったりします。
本来なら、預託金はあくまで預かっているだけのお金ですので、会社の経費とは分別して保管すべきものです。
しかし経営状態の悪い身元保証会社では、預託金を会社の操業費用に回して運営しているケースもあるそうで、そうした身元保証会社にとって、預託金の返還は死活問題にもなりかねず、返還には頑なに応じないというケースも出てくるわけです。
この点に関しては国民生活センターからも「身元保証などの高齢者サポートサービスをめぐる契約トラブルにご注意」として注意喚起が出ていますので身元保証会社との契約を考えている方は一度目を通されることをお勧めします。
ここで学ぶべきことは、一度預けたお金は簡単には帰ってこない。預けるならしっかりと確認してから支払うようにしましょうということです。
トラブル事例3
本人が望まない寄付をさせられる
次に指摘されるトラブルとしては「本人が望まない寄付をさせられる」ということです。
なぜこんな事が起きるのかというと、身元保証契約を結ぶ際には併せて「遺言書」を作成するケースが多いからです。
私たちが「死後事務委任契約」を結ぶ際にもこうした遺言書を作成してもらいますが、なぜ身元保証や死後事務委任契約をする際に遺言書を作成するのか?
身元保証や死後事務委任契約を必要とされている方の多くは、そもそも身元保証や死後事務をお願いできる親しい親族がいないため、第三者に身元保証や死後事務を依頼している方々がほとんどです。
そうした利用者にとって自分の死後に遺産を積極的に渡したい親族がいないケースも多く、依頼を受ける側としては、死後の手続きの一環として依頼者の財産整理も含めて整理する必要があるため、身元保証や死後事務を契約する際に予め「遺言書」という形で、財産整理の準備をしているということです。
遺言書の効果は非常に強力で、遺言書を適切に準備しておくことで、依頼者に本来相続人となるべき兄弟姉妹がいたとしても、その方たちの干渉を排して手続きを進めることも可能となります。
ただ、こうした強力な効果を発揮する遺言書ですが、作成自体は簡単にできてしまうこともあり、場合によっては悪用されるケースもあります。
遺言書には、一般的に使用されるものとして「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」があります。)法務局で自筆証書遺言を預かってくれるサービスも始まりましたが今回は省力)
公正証書遺言の場合は、公証人の面前で遺言内容を確認し、証人2名の立ち合いのもとで遺言書を作成しますので、本人の遺言意思を第三者が確認することになります。
遺言書の内容が極端に偏っているような場合は公証人の方でも「本当にこの遺言で大丈夫?」という確認もしてもらえますので、本人が望まない内容での遺言書というのは基本的には作成されません。
しかし、「自筆証書遺言」の場合は、紙とペンと印鑑があれば作成できてしまい、その内容を第三者に確認してもらう必要もなく、遺言者がひとりで作成することも可能です。
自筆証書遺言でも公正証書遺言でもその効力に上下はなく、有効な自筆証書が遺言があれば公正証書遺言と同じ結果を出すこととなります。
つまり、身元保証を行う際などに悪いことを考える一部の人間は、相手が高齢者で判断能力が弱く、また身元保証を必要としているという弱みに付け込んで、「亡くなった後の面倒は全て私たちが行うから、財産はその費用に充てられるように全額会社に寄付すると自筆証書遺言に書いてください」と唆すわけですね。
そうすると、誰も内容を確認していない遺言書で利用者から悪徳な事業者へ利用者の全財産が誰にも知られないうちにこっそりと移ってしまうことも起きうるわけです。
もちろん、利用者の中には「世話になるんだから代わりに財産は寄付する」と自発的に寄付を検討される方もいるでしょう。
本人の意思に基づて寄付するならそれは寄付をされる方が自分の財産をどのように処分するかは自由に決めればいいことです。
しかし、こうした寄付を巡っておきる遺言書のトラブルのほとんどが「自筆証書遺言」であり、本当に遺言書の内容が本人の意思に基づいてなされたものなのかが怪しいケースがあります。
寄付を受ける団体、特に故人の生前に密接に関わることとなる身元保証会社などは寄付を受ける場合は、積極的に公正証書遺言の利用を勧めて、なんら後ろ暗いことはないことを証明しておくべきですね。
利用者側としても、身元保証会社や関連団体へと寄付する内容の遺言を自筆証書遺言での作成を勧めてくるような会社とは契約しないようにしましょう。必ずトラブルとなります。
ここで学ぶべき内容は、遺言書を作成する場合は自分の意思を貫く。身元保証会社等への寄付を勧める会社とは契約しないということです。
死後事務トラブル4
親族からの苦情
最後に紹介しておきたい死後事務とトラブル事例としては、「親族からの苦情」です。
死後事務委任契約の利用としては、親族がいなかったり疎遠な関係な方が多いと書きました。しかし、それらの内容はあくまでご本人から契約時に聞き取った事情でしかありません。
わざわざ疎遠な関係と言われている親族へ、「依頼者とあなたは疎遠な関係なんですね?」などと契約時に確認したりはしませんので、場合によっては依頼者本人の思い込みということだってありえます。
また、「確かに疎遠な関係ではあったが、葬儀まで他人任せにするほどの関係ではなかった」「亡くなったのなら、遺骨は実家の墓に入れてやりたいと思う」など、親しくはないけれど、関係が断絶しているとまでは言えないケースもあります。
近年は「家族に迷惑や負担をかけたくない」との理由から、死後事務委任契約を利用される方もいますので、そうした場合は疎遠なケースよりももっと慎重に契約手続きをしておかないと、万が一の際に大きなトラブルへと発展します。
過去に私が聞いた実際のトラブルとしては、身元保証会社から依頼を受けて葬儀をあげたら、親族から葬儀業者へと「なんで他人がかってに葬儀をあげているんだ!(怒)」と強いクレームが入ったとのことです。
つまり、身元保証会社が身元保証とともに葬送支援(死後事務)を受けていたケースで、依頼者が亡くなり契約に従って葬儀をあげたら、葬儀業者がとばっちりを受けたということです。
本来なら身元保証会社が責任を負うべきところなのですが、葬儀の依頼を受ける側としては強く出れなかったのかもしれませんね。
ここで問題となるのが、「他人の葬儀をあげることができるのか?」という根本的な疑問があります。一般的に葬儀などの手配は親族が行っているもので、あまり第三者が葬儀をあげるというのはピンとこないかもしれません。
しかし、法律上は身元保証会社などが葬送支援として行っているように第三者が葬儀をあげること自体は問題ありません。
ただし、当然のこととして葬儀を主宰する(喪主となる)ということは、親族が行うことが一般的であり、天涯孤独のような方の場合はともかく、親族がいるケースで第三者が葬儀を主宰する際はしっかりとした準備をしておかないと上記のようなクレームへと発展してしまいます。
死後事務委任契約のように、葬儀の希望を予め信頼する第三者へと伝えておき、万が一の際はその人に葬儀をあげてもらうという方法があります。
ただ、死後事務委任契約は極端な話し「口頭での依頼」でも成立するもので、必ずしも書面にしなければいけないというものでもありません。
しかし、葬儀という親族関係と密接に関わる内容を口頭だけで第三者が受任するのは論外ですし、できればしっかりとした契約書にまとめておくべきものです。一般の契約書ではなく、公正証書によって作成しておけばなお良いでしょう。
トラブルとなるのは、葬儀の方法や費用などがしっかりと契約書に明記されておらず、予想外に費用が掛かった場合や本人が望まない形での葬儀の方法だったなど、後から親族等が契約書を確認した際に不審な点があるようなケースがトラブルとなります。
ここで学ぶべきは、誰が見ても本人の意思が一目瞭然となる形で契約書を準備しておくことです。これは依頼者本人が注意するべきことではなく、むしろ死後事務を受ける側が後々トラブルに発展しないためにも注意するべきことですね。
死後事務委任でトラブルを発生させない対策と方針
死後事務委任契約でトラブルを発生させない為の対策としては上記のような問題があることを念頭に準備していくことです。
例えは受任者側の破産や事業中止などについては、なるべく公共性の高いところを中心に探していいくことになります。
近年は自治体や社会福祉協議会なども身元保証や死後事務の分野へとサービスの幅を広げてきていますので、民間事業者で身元保証をしてもらうよりも、利用料が安くまた破産などの心配もしなくてすむケースもあります。
ただ、必ずしも全ての自治体や社会福祉協議会でそうしたサービスを提供しているわけではありませんので、お住まいの地域でこうしたサービスが利用できない場合は、民間業者で探す必要がでてきます。
そうした場合は、より安全に身元保証や死後事務委任のサービスを利用するうえで次のことに注意しながら利用業者を探してみてください。
1、預託金の有無
身元保証や死後事務のトラブルの多くが預託金について発生しています。
事業者としては、依頼者の経済状況の悪化に備えて事前に必要な費用を預託金として預かっておきたいという要望があります。
しかし、依頼者側としては多額の現金を預けておくのは心配だということも当然ですので、預託金を預ける場合は、事業者に預けるのではなく、信託銀行などを利用して預託金と事業者の運営資金を分別し管理が徹底されている事業者を選ぶようにしましょう。
また、私たちの協会のようにそもそも預託金を預からずに、掛かる費用は遺産から清算するという方法を採っているところもあります。
この場合は多額の現金を事前にどこかに預ける必要はありませんので、万が一事業者が倒産したとしても現金としての被害は被らずに済むことになります。
預託金を預けるからトラブルが発生しやすくなるのであって、もともと預けなければトラブルに発展しようがないということですね。
2、専門家の有無
身元保証や死後事務は本人の権利擁護も含めて、死亡後の相続手続きといった高度に専門的な知識を必要とする分野です。
当然、遺言書や死後事務委任契約書の作成といった場合は、正しい知識を基に作成していかないと、後々トラブルへと発展する危険性含んでいます。
身元保証に限らず、遺言書や死後事務委任契約書は専門の士業が在籍して、直接手続きに関与してくれる事業者を選ぶことをお勧めします。
3、作成書類の種類
遺言書や死後事務委任契約書は、本人の意思確認の最終手段となります。
遺言書や死後事務委任契約書の効果が発揮される時点では、本人は既に亡くなっていますので、後から確認するということはできません。
相続開始後は遺言書と死後事務委任契約書に書かれていることが全てであり、それ以上でもそれ以下の手続きもありません。
遺言執行者や死後事務受任者は遺言書と死後事務委任契約書に書かれている通りに責任を果たす必要がありますので、その遺言書と死後事務委任契約書はなるべく信用性の高い書類が望まれす。
緊急な手術や病気などで公正証書を作成する時間もないという場合は別として、はじめから公正証書での作成を否定するような事業者とは契約しないほうが良いでしょう。
信用性の高い書類で作成することで本人の意思が明確となり、それによって親族からの苦情やトラブルの発生も抑えることに繋がります。
4、解約時のしやすさ
何度も書いているように、死後事務委任契約は契約してから発効するまでの間に何年もの期間が空くのが普通です。
当然、その間に新たなサービスの開始や利用している事業者のサービスが自分に合わないと感じることもあるでしょう。
そうした場合に備えて、もし解約するとなった場合はどのような手続きになるのかを契約を始める前に確認しておくことが大切です。
契約する前から契約を終えることを考えるのはいささか慎重すぎるかもしれませんが、それくらいの慎重さをもっていれば預託金の返還トラブル等で無駄な時間と労力を費やさなくて済むようになります。
死後事務委任契約のご相談は死後事務支援協会へ
最後は宣伝となりますが、死後事務支援協会では上記のようなトラブルが発生しないように対策したうえで死後事務支援を行っております。
死後事務委任契約を中心に身元保証サービスも行っておりますが、死後事務や身元保証契約でトラブルの中心となる預託金を不要していることから、事業者の破産や事業中止、預託金の返還トラブル、サービス団体の切り替えの際の解約トラブル等は発生しない仕組みとなっております。
また、遺言書や死後事務委任契約書の作成は相続や死後事務を専門に扱う国家資格者が行っておりますので、安心してお任せいただけます。
死後事務委任契約に興味がある方はお気軽にご相談くださいね。
ご連絡お待ちしておりま~す。
2021.11.27
自宅保管の遺骨を火葬場(斎場)に引き取って貰う方法
おはようございます。名古屋の死後事務支援協会代表の谷です。朝晩の冷え込みが厳しくなってきましたね。北海道などでは既に豪雪になっているとか。名古屋は雪に弱いですので、なるべく降らないことを祈っています。
さてさて、本日の話題は「自宅保管されている遺骨(骨壺)」のお話しです。
死後事務のご相談者のご自宅を伺ったりすると、仏壇などに骨壺がそのまま安置されているケースがままあります。
相続手続きのお手伝いなどでは、お墓や納骨堂に入れる前に一時的に安置しているだけということもありますが、そうしたケースではなく、もう何年もご自宅で供養を続けていると方々です。
事情は様々で、
・お墓や納骨堂に入れるつもりだったが自宅での供養を続けてしまった。
・兄妹や配偶者の親族の遺骨で入れる墓がなく仕方なく自宅で保管していた。
・経済的な事情でお墓や納骨堂を用意できず自宅で保管している。
・お墓の管理で子供達に迷惑をかけたくないので、墓じまいを考えていた。
などなど、ご自宅で遺骨を保管されている理由は様々です。
そもそも自宅で遺骨を保管しているのは問題ないのか?というと別段法律でいついつまでにお墓に入れなければいけないといった決まりはありませんので大丈夫です。
最近は住宅事情に合わせた手元供養のセットなども販売されており、自宅で遺骨を供養される方は年々増えてきているようですね。
ただ、注意しておかないといけないのは、「遺骨を自宅で保管するのは問題ないけれど、最終的にどうするのかは決めておかないといけない」ということです。
なぜなら、自宅保管されていた遺骨について家族が困ってしまうことになるからです。
遺品整理などを行っていると、ご自宅の仏壇や祭壇に骨壺が安置されていることがあります。当然こうしたご遺骨に関しては、遺品整理の家財などと一緒に処分することはできません。
故人と疎遠な関係だった依頼者の中には、「遺品と一緒に処分してくださって大丈夫です!」と言われる方もいますが、さすがにそれは法に触れてしまいます。
では、どうすればいいのかというと、次のような方法となります。
・お墓や納骨堂にいれる。
・散骨や樹木葬などを行う
・本山納骨のように「送骨」に対応するお寺へ送る
・民間の合葬墓などに埋葬する
つまり、遺骨を自宅で保管されていた方のご家族が改めてご遺骨をどうするのかを決めて、対処するということですね。
ただ、自宅で保管されている遺骨には、上であげたケースのように、故人の兄弟姉妹の遺骨だったり、故人の配偶者の親族の遺骨だったりと、相続手続きをしている遺族で勝手に処遇を決めてしまってもいいのかと悩むケースもあったりします。
相続手続きはただでさえ煩雑で親族の負担になっているのに、「このお骨はどうすればいいんだ!!」と、家族を困らせないためにも、自宅で保管や供養をしている遺骨については、保管者がいなくなった後のことも決めておかなければいけません。
別段難しく考えることはなく、もし自宅で保管している方に万が一の事があった場合の希望を死後の手続きをされる親族などに伝えておく。これだけでもいいでしょう。
エンディングノートや遺言書の付言事項として記載しておくとより安全。また、ご遺骨をお墓や納骨堂などへ入れる際に費用が発生するなら、そうした費用を手続きする人にちゃんと渡るように準備しておくと完璧です。
また、一部の地域では自宅で保管している遺骨を火葬場で引き受けてくれる地域もあります。
死後事務支援協会のある名古屋では、八事斎場という火葬場があります。この八事斎場ではいくつか条件と手続きはありますが、自宅で保管している遺骨を引き受けてくれます。
西日本ではもともと火葬時の収骨は「部分収骨」の地域が多く、火葬時に申請をすれば遺骨を骨壺に入れて持ち帰らない「収骨なし(焼き切り)」を選択することも可能な場合があります。
最近では0(ゼロ)葬とも呼ばれている方式ですね。自宅で保管している遺骨を火葬場に引き受けて貰うのは、この0葬をやり直すようなイメージです。
ただ、自宅保管していた遺骨を再度火葬場にて引受けてもらう方法は、火葬時に収骨なしを申し出る場合より条件が厳しくなりますので、希望する場合は必ず事前に自分が保管している遺骨でも可能かどうかを担当部署に確認するようにしてください。
ご依頼を頂ければ、当協会で八事斎場に引き受けてもらう手配も行いますのでご相談ください。詳しくは、「直葬・ゼロ葬の上手な利用方法」をご確認ください。
いずれにしても、ご自宅で保管しているご遺骨は行き先を決めておかないとその後にご家族を困らせてしまうこととなります。
ご自宅で保管しているご遺骨がある場合は可能な限り保管者にて行き先の決定や生前での対応をしておきたいものですね。
ご自宅で保管しているご遺骨についてお困りでしたらいつでもご相談ください。
2021.10.03
不動産を市町村に寄付する代わりに解体や遺品整理を任せることはできるのか?
おはようございます。死後事務支援協会代表の谷です。眞子様のご結婚正式に発表されましたね。おめでとうございます。末永くお幸せに。
さて、結婚とは正反対の死後の手続きの話題ばかりで恐縮ですが、今回も同じく死後の話題です。(笑)
死後事務に限らず、遺品整理のご相談でも良くある話しなのですが、相続した不動産を市町村へ寄付したいというご相談。
不動産を寄付したいというだけなら、土地の利用状況や換金した上での寄付といったご提案は可能なのですが、ここである相談というのが、家屋の解体や遺品整理を行う費用がないので、市町村に不動産を寄付する代わりに、そうした家屋の解体や遺品整理を市町村にお願いすることはできないのか?という相談です。
これが個人間の話しで、例えばお隣同士のお話しなら、「ま~、自宅の敷地も広がるし、それ位は負担してもいいかな」ということはあるかもしれません。
しかし、相手が市町村などの場合にはなかなかそうはうまくいかないのが実情です。
こうした相談の多くは、一人暮らしの高齢者が住んでいた古い家屋で、家財やゴミがぎっしりというケースが多く、遺品整理や家屋の解体に相当な金額が必要と見込まれるような状況です。
当然、相続人としては、自分達の持ち出しはなるべく少なくしたいと考えるわけで、親族で誰も利用しないなら市町村へ寄付して、遺品整理や家屋の解体はそっちに任せてしまおうと考えている場合ですね。
では、そうした希望は叶うのか?というと、まず無理です。
不動産というと高い資産価値を有しているようにも思えますが、本当に価値のある不動産でしたら、親族だって遺品整理や家屋解体の負担をした上で売却手続きをすれば、利益が見込めるはずです。
しかし、そうせずに市町村に任せようと考えるということは、遺品整理や家屋を解体した上で売却したとしても、利益や労力に見合わないと考えているからに他ならないわけです。(立地や土地の形状など資産価値が低い)
最近良く耳にする言葉でいうなら資産価値の少ない、むしろマイナスにもなりうる「負動産」というわけですね。(資産価値や利用価値の高い不動産なら、市町村でも建物などが残っていても寄付を受け付けてくれる可能性はあります。)
当然こうした負動産ともいえる物件は、市町村側でもノーサンキューな訳で、あげると言われてもいらないわけですね。
もちろん、寄付自体はウェルカムな訳ですから、相続人が不動産の遺品整理や家屋解体を行った上で、売却してお金に代えた上でなら、喜んで受け取ってくれるでしょう。
もちろん、そこまでするなら敢えて市町村に寄付なんて考えには至らないのでしょうけれども(笑)
結論をいうなら、利用価値の低い不動産を市町村が遺品整理や家屋の解体の費用負担をしてまで、寄付を受ける可能性は限りなく低いということになります。
もちろん一律に不可ではありませんので、一縷の望みを掛けて役場の窓口に相談するのは問題ありません。
相続等により取得した土地所有権の国庫に帰属に関する法律
上の相続した土地を市町村に寄付できるかという話題と似ていますが、今年(令和3年)の4月に「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」なるものが成立いたしました。
これは、端的に言えば、いらない土地を国へ渡す制度です。
近年、相続によって、望まぬ土地を取得してしまい、その管理や税金などで相続人の負担が増加して、結果的に管理不全の土地が問題となっています。この管理不全の土地問題の解決策のひとつとして成立したのがこの法律な訳です。
「なんだ、土地を手放す方法ができたんじゃないか!それなら、じーちゃんが住んでいた家ごと国へ渡してしまおう!」とは、いきません。
詳しくは、法務省の「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫貴族法)」をご確認頂くとして
この法律は、相続した不動産の税金や家屋の解体費用に困っている相続人を救済するために制定された法律ではありません。
どちらかというと、所有者不明の土地や管理不全の土地が増えるくらいなら、費用を相続人に負担させた上で、しかたがないから国へ帰属させるか、というものです。
ですので、相続した土地を国庫へ帰属させることができるといっても、なんでもかんでも国が受け入れてくれる訳ではなく、国庫へ帰属させるための要件が厳しく決められています。
相続人として、一番身近な理由でいうなら、「土地を持ってても固定資産税や家屋の管理費で出費が痛いから国へ渡してしまいたい」という理由は基本的にアウトです。
市町村への寄付の際もそうですが、国庫へ帰属させるにあたり、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地に関しては、国庫へ帰属させることはできません。
具体的にあげられている却下要件としては、次のようなものとなります。
1、建物の存する土地
2、担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
3、通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
4、土壌汚染対策法上の特定有害物質により汚染されている土地
5、境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地
上記の「却下要件」以外にも「不承認要件」もあり、国庫へ帰属させるための要件はかなり厳しく決められています。
そもそも、遺品整理の現場では「建物」があるのが当然ですから、最初から国庫へ帰属させる要件からは外れてしまっていることになりますね。
では、建物が無くて、土壌汚染やその他の権利関係も綺麗なら国庫へ帰属させられるのか?「土地を持っていても、管理や固定資産税が出るだけで、手放せるなら手放してしまいたい!」と考えている方も多いと思います。
却下要件や不承認要件に該当しなかれば、国庫へ帰属させる可能性は出てきますが、もうひとつクリアしないといけない壁「負担金」の問題があります。
要件審査を経て法務大臣の承認を受けた者は、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10年分の土地管理費用相当額の負担金を納付しなければなりません。
つまり、土地を国へ差し出すのにさらにお金も支払わないといけないということですね。
こうなると、もう「お金を払って引き取ってもらう」負動産そのものともいえますが、民間ではタダでも買い手がつかない土地というケースもありますので、そうしたケースでは、国へお金を払ってでも帰属させることができるということには意味が出てくるのかもしれません。
いずれにしても、資産価値の低い土地を手放すことはなかなか簡単にはいかないということですね。
2021.10.01
成年後見人は死後事務を行ってはくれない?
おはようございます。死後事務支援協会代表の谷です。
緊急事態宣言も全面解除され、コロナ患者も減少してきて、やっとコロナ迷宮の出口に光が差してきた感じですね。ここで落とし穴に落ちないようにする為にも基本的な感染対策は続けていきましょう!
さてさて、死後事務委任契約についてですが。死後事務のご相談を受けている際にこんな質問を受けることがあります。「将来、認知症になって成年後見人がついたら死後の手続きはその人が全部やってくれるんですよね?」
さて、どうなんでしょう?
最近よく耳にする「成年後見人」、判断能力の衰えてきた高齢者の方の財産管理や身上監護を行う方となります。これは、家族がなる場合や士業のような専門家がなることも多いですが、成年後見人の選ばれ方によって大きく変わることとなります。
既に、認知症等で判断能力が失われてしまっている方の場合は、家庭裁判所によって「法定後見人」という方が選ばれます。
これは、親族などから申し出によって、家庭裁判所にて、ご本人にとって最適な方を後見人として選任するタイプですね。後見人には家族がなることもあれば第三者の専門家がなることもあります。
もうひとつが、「任意後見人」。こちらは、ご本人が元気なうちに、自分が判断能力を失った時に備えて予め、自分で自分の事を託せる方を選んでおく方法です。
ですので、任意後見人も家族がなる場合や専門家がなる場合、どちらもあることは法定後見人と一緒ですが、自分が信頼する方を事前に決めておくことができる部分が法定後見人とは大きく違うところとなります。
では、本題に戻って成年後見人はご本人(成年被後見人)が亡くなった場合に、葬儀や遺品整理、行政機関への届出などはできるのでしょうか?
これは、法定後見人、任意後見人ともに死亡届のように一部できる業務はありますが、一般的に死後事務として望まれる大部分については、「出来ない」という答えとなります。
正確に言うなら、「死後事務は成年後見人の業務ではない」というのが正しい表現となるでしょうか。
成年後見人の業務は、ご本人の身上監護や財産管理が業務範囲です。端的に言えば、成年後見人が成年後見人として活動できる期間は、本人が存命中の間だけです。
つまり、ご本人が亡くなった段階で、成年後見人としての基本的な業務は終了してしまうため、成年後見人としては死後の手続きを行うことはできないこととなります。
成年後見人の一般的なイメージとしては、高齢者の方のお困りごとを幅広くサポートするというイメージがあるかと思います。
そうしたイメージの中には、高齢者が亡くなった後の葬儀や埋納骨、遺品整理といった、亡くなった後に行わないといけない手続き全般もサポートしてもらえるんだと思われている方がけっこういます。
どうして、こうしたイメージがついてしまっているかというと、成年後見人に家族がなっている場合は当然、家族が家族として、死後の手続きをおこなったりしますし、専門家がなった場合でも、家族がいない方の死後の手続きを放置しておくわけにはいかないとして、業務範囲外であっても、関係機関と連絡しあってなんとか手続きをしてきたという部分もあったりするからと思われます。
しかし、先ほども述べたように、死後の手続きは基本的には成年後見人の業務ではないため、家族以外で死後の手続きまでやってくれている成年後見人はあくまで例外的な対処となります。
では、成年後見人は一切、死後事務はできないのか?というとそうとも言えません。先ほどあげた、ふたつの成年後見人のうち、自分で将来成年後見人になってもらう方を事前に決めておく「任意後見人」のケースでしたら、任意後見契約を結ぶ際に、「死後事務委任契約」も一緒に結んでおけば、任意後見人として活動していた方が、死後の手続きも引き続き行ってくれることとなります。
これは、任意後見人が死後事務を行うことができるというわけではなく、任意後見人の方もご本人が亡くなった段階で任意後見人の業務が終了することは、法定後見人と変わりありません。
ただ、事前に「死後事務委任契約」を任意後見人の方と結んでいることで、任意後見人の方が、任意後見終了後、新たに「死後事務受任者」に就任して、死後事務受任者として活動することができるようになるということです。
なんで、いちいちそんなメンドクサイことをするんだろう?と思われるかもしれませんが、ご家族が死後の手続きを行う分には、何か問題があってもご家族間の問題ということになります。
しかし、第三者が就任することの多い「死後事務委任契約」では、権利関係を曖昧にしたまま行ってしまうと大きなトラブルへと発展してしまいます。
例えば、親戚が亡くなったと聞いて尋ねてみたら、縁もゆかりもない第三者が勝手に葬儀をあげて、遺骨を菩提寺とは関係ないお寺に埋葬していた、なんて聞いたらどう思われますでしょうか?
普通に考えれば「赤の他人が、なんで勝手な事をしているんだ!!」と、関係者の方々は当然、激怒することでしょう。たとえ、それが裁判所で選任された法定後見人であったとしてでもです。
しかし、そうした死後の手続きがご本人の意思に基づいて行われていたというなら、話しは変わってきます。もちろん、ご家族やご親戚の想いをないがしろにしていい訳ではありませんが、大事なのはあくまで「本人がどうしたいか」です。
自分の死後にこうして欲しいというのは、言ってみれば本人の最後の希望でもあります。皆さんが良くご存じの「遺言書」もそうですよね。
遺言書は主に財産関係に関する本人の最後の希望であり、これは法律で定められている「法定相続分」などよりも優先して、その意思の実現が図られるよう法律で保護されたものでもあります。
これと同じように、遺言書では書けない死後の希望を記載しておくのが「死後事務委任契約」であり、こちらも本人の最後の希望を叶える強い効力を持つ書面となります。
こうした本人の意思を確認することができる書面としては、最近は「エンディングノート」のような、死後の手続きに必要なことをまとめておく書籍や冊子も多数販売されています。
もちろん、こうした書籍等を利用するのも有効な方法ではありますが、エンディングノートはご自身が記載するだけの物でもありますから、あくまで「メモ」以上の効果はありません。(法的な拘束力などは生じない)
死後事務委任契約は、事前に選んだ信頼できる方と結ぶ「委任契約(準委任)」であり、契約である以上はそこに法律的な効果が発生します。
つまり、死後事務受任者となった方は、勝手には契約を放棄することはできないこととなり、エンディングノート等より、はるかに強い実現効果が望めることとなります。
当然、そうした法的効果を発揮させるために、誰が何をどういった方法でと、細かに依頼内容や報酬が決められることとなりますので、依頼した側、依頼を受ける側の権利義務が明確となります。
そうした、本人の意思を実現するための、正式な書面があることで、たとえ第三者であっても本人から正式な依頼を受けたという事で、ご親族との考えと異なっていたとしても、何憚ることなく業務を遂行することが可能となるわけです。
話しが長くなりましたが、まとめると
死後の手続きは、基本的に成年後見人は行うことはできない。
ただし、事前に死後事務委任契約を結んでおくことで、その意思を実現してもうらうことは可能となる。
※法定後見人の場合は、本人の判断能力が失われた後で裁判所にて後見人を選任するため、法定後見人と事前に死後事務委任契約を結んでおくということは難しいこととなります。
そうした場合は、死後事務委任契約だけを信頼できる方へとお願いしておくことで、法定後見人の業務が終了した段階で、死後の手続きからは、事前にお願いしておいた方が、死後事務受任者として手続きを進めていくということも可能となります。
いずれにしても、死後の手続きで不安や心配がある場合は、一度ご相談くださいね。
2021.09.23
遺品整理で1,000万円をドブに捨てられないために
おはようございます。名古屋の死後事務支援協会代表の谷です。すっかり秋めいてきましたね。コロナの感染者数も落ちてきたようで月末には緊急事態宣言も解除の見込みとのこと。秋の行楽シーズンも控えていますが引き続き基本的な感染対策は行っていきましょう!
さてさて、本日は死後事務とも関連の深い「遺品整理」でのお話しになります。ここ数日連日のようにゴミ処理施設から多額の現金が見つかったというニュースが出ていました。
令和3年9月21日
gooニュース
令和3年9月22日
岐阜新聞WEB
令和3年9月22日
讀賣新聞オンライン
なんでこんなにもゴミ処理施設から大金が発見されるのか!?については、私の個人事務所である遺品整理専門第八行政書士事務所の「第八ブログ」に大元の原因を記載してあるので、興味のある方はそちらをご確認ください。
今回は原因の追及ではなく、対策に焦点を当てていきたいと思います。
タンス預金がゴミとして処分されている!?
ゴミ処理施設で発見される多額の現金の多くが、遺品整理時に発見されずにゴミ処理施設へと運ばれ、その後持ち主不明となってしまい発見者であるゴミ処理施設の所有となったり、ゴミ処理施設から市町村等へ寄付されたりしています。
この多額の現金が、遺品整理の現場で出てきた家財の中に紛れていたのでしたら、本来ならそれは相続人へと渡るべきお金だったのは間違いありません。
でも、実際は遺品整理の際のゴミと一緒にゴミ処理施設へと運ばれてしまい、まったく関係のない第三者の物となっているわけです。
こんな不合理な結果となってしまう大きな要因のひとつが「タンス預金」です!
タンス預金といっても、家具のタンスに限った話しではなく、いろんあ所に隠してあるお金という意味でのタンス預金ですね。
私も遺品整理専門としてこれまで何千件もの遺品整理を行っていますが、隠す人は本当に奇想天外の場所に隠していたりしますので、「これは普通みつけられないだろう、、、」というケースも何件も経験しました。


タンスの中に衣類に包んで隠しているとか、家具の下に放り込んで隠してあるとか、雑多な日用品に紛れて金貨が残っていたなどは、整理する業者が正しい知識と捜索方法を持っていれば、問題なく見つけることが可能ですので、それほどやっかいではありません。
問題なのは、普通の遺品整理では確認しないような場所、例えば天井裏、畳の下、トイレタンクの底、ユニットバスの点検口の奥などに隠しているような場合。
家財整理をするだけの遺品整理業者では、わざわざそんな場所までは時間の無駄となってしまいますので、依頼者からあえて探して欲しいとの要望でも出ない限りは探すことはありません。
そうした、隠す本人が絶対に見つからないように隠しているような財産というのは本当に見つけるのは難しいもので、特に隠した本人が隠したことを忘れてしまっているようなケースでは発見は困難なものとなります。
私自身も何度か、「え、こんなところに、、、」と予想外の場所で大金を見つけたことはありますが、中には隠した本人も忘れているんじゃないの?と思われるケースも確かにありました。
そうしたケース、特に隠した本人も忘れている、または伝える前に高齢で認知症になってしまったなどの場合では、当然家族も「そんなお金があるなんて知らなかった!」状態ですので、お金が出てきた事を伝えると驚くやら、喜ぶやらで相続人間で緊急会議が始まったりします(笑)
しかし、隠していた大金が見つかれば相続人も笑い話しで済ますことができますが、最初のニュースのように、相続人も知らない内にゴミとして処分され、あげく全く関係のない第三者の物となってしまっては、泣くに泣けませんよね。
もちろん、当の相続人の方々は最初から多額のお金なんて無いと思っていますので、ニュースで多額の現金が出てきたと見たとしても、「自分達が依頼した現場から出たかも?」とは露程も思わないことでしょうから、残念がることすらできない状況です。
悲劇を防ぐ方法はとっても簡単
こうした悲劇を防ぐ方法はとっても簡単です。自分が隠す程大事にしている財産を渡したい相手に渡せる準備をしておけばいいだけです。
何も「遺言書」や「死後事務委任」、「死因贈与」といった専門的な方法でなくても、単に「あそこにお金を置いてあるからなんかあったらそこから費用を出してね」と家族や渡したい相手に伝えておくだけでもいいのです。
実際、私が去年行った遺品整理では、甥子さんが「見たことはないのですが、叔父はあそこに葬儀費用程度のお金は置いておくから、何かあればそのお金使って欲しいと言っていました」と、実際の隠してある場所は見たことはないのですが、口頭で聞いた内容を私に伝えて、私が実際にそのタンス預金を発見したということもあります。
それだけでも十分に捜索の端緒になったりするものですから、「伝えておく」というのがいかに大事なことかがわかりますよね。
もちろん、「事前に伝えておくのはちょっと、、、」や「変に期待させると自由に使えなくなるので、自分が死んでから見つけてもらいたい」という要望もあるでしょうから、生前にはっきりと伝えるのを避けたいなら、後から分かるように書面に残しておく方法もあります。
最近は書店にいけば「エンディングノート」といって、自分の死後の要望や財産状況など相続発生時に必要となる情報を綺麗にまとめている冊子も沢山の種類が売っています。
そうしたエンディングノート等を活用して、必要な人へと大事な情報を伝わるようにしておくと、遺品整理や財産調査をする家族や相続人の負担を大きく減らすこともできます。
もし、財産の分け方や死後の手続きに自分なりの強い希望があるという場合なら、エンディングノートには法的な強制力はありませんので、法的効果のある「遺言書」や「死後事務委任契約書」を事前に作成しておくことをお勧めします。
エンディングノートなどは、室内に置いてあっても事前に書いた事を伝えておかないと、結局家族に気づかれずに処分されてしまうこともありますが、遺言書を公正証書や法務局での保管制度を利用して作成しておけば原紙は公的機関にて保管されることとなりますので、遺品整理で見つけられなくても、後から原紙を確認することも可能となります。
大事なお金を渡すべき相手に届くように自分にあった方法で準備をしておけば、上のニュースみたいに「ゴミ処理施設で発見!」なんて悲劇は回避できます。
準備をしておきたいけど、どんな方法が自分に合っているのかわからないという方は、いつでもご相談に応じていますので、ご連絡くださいね。
2021.09.06
死後事務を依頼していた姉としていなかった弟、遺された家族の苦悩
おはようございます。名古屋の死後事務支援協会代表の谷です。9月に入っていっきに涼しくなった感がありますね。食欲の秋が来る~って感じですが、この時期の楽しみのサンマが高い!いつからサンマは高級魚になってしまったのか、、、。
さてさて、本日は死後の手続きのご相談について。当協会で行っている死後事務委任契約は、ご本人様より依頼を頂いて、「自分に万が一の事があったら打ち合わせ通り、後のことはよろしく頼む!」という感じで、ご本人様より生前に依頼を受けて行うものとなります。
これとは別に、故人の死後事務を家族から依頼を受けて行うという手続きも当協会ではサポートしています。何が違うかと言えば、依頼者が「亡くなった本人」か「家族」かの違いがあります。
確かに死後事務委任契約は亡くなったご本人と事前に結んでおくものですが、事前に死後事務委任契約を結んでいなかったからといって、死後事務の手続きを第三者ができないわけではありません。
故人の権利義務や故人の死後の手続きを行うべき家族から委任を受ければ、私たちのような士業は家族の代理人として活動することができますので、ご本人から生前に依頼を受けて行う死後事務委任契約となんら変わらないサポートが可能です。
もともと、死後事務や相続手続きは家族や相続人が行ってきたものですが、近年の超高齢社会の影響などから身近な人に迷惑をかけないようにと、注目を集めてきたのが死後事務委任契約となります。
ですので、本来、手続きを行うご家族や相続人の方の協力があれば、私たちのような士業は通常の相続業務と同様に死後事務のサポートも行うことが可能なわけですね。
今回のご相談は、そうした家族の方からの死後事務のサポートに関するご相談です。
故人は名古屋市内に在住していた方ですが、相続人となられるご兄妹は遠方に住んでおり、年齢などの関係からも気軽に名古屋へ来られる状況ではありません。そうした中でインターネットで当協会の情報をご覧になり、相談のお電話を頂いたという経緯です。
葬儀の関連で名古屋に来られるタイミングで、面談を行うことになり、ご相談者以外の相続人がいる待ち合わせ場所で打ち合わせをすることとなりました。
その際に聞いた話しなのですが、今回亡くなった弟さんとは別に数年前にお姉さまが亡くなったそうです。お姉さまもお一人身の方だったようですが、事前に死後事務に関する手続きを第三者へと依頼してあったとのこと。
ですので、お姉さまが亡くなった時は、葬儀から相続手続きまで全ての死後事務を相続人以外の第三者が行ってくれていたため、ご相談者の方達は必要な書類を提出したり、署名捺印する程度くらいの関与しかしていません。
そうしたちょっとした手続きへの協力だけで、預貯金の払戻し金が指定の口座へ入金され、お姉さまが所有していた不動産の名義は相続人名義へと変更され、当然役場関係の手続きも全て終えられており、非常に手間いらずの状態でお姉さまの死後事務と相続手続きを終えたそうです。
そんな経緯から、今回の相続人の中には「相続手続き何するものぞ」とばかりに、相続や死後事務の手続きは非常に簡単なものといったイメージを持たれている方もいらっしゃいました。
しかし、それはお姉さまが事前に死後事務を信頼できる方へと依頼してあったからこそであり、一般的に死後事務や相続手続きは難解でメンドクサイものです。でなければ、週刊誌などで相続や死後事務関連の特集があんなにも組まれたりしませんよね。
そして今回直面した弟さんの相続と死後事務の手続き。ご相談者の方はわざわざ相談の電話を入れてきている訳ですから、相続や死後事務手続きが簡単にはすまないだろうと思っていらっしいます。
しかし、相続人の方の中には上で述べたお姉さまの時のイメージが残っているのか、私が伺った際に「何を依頼するの~、自分達でやれるでしょう~、お姉さんの時はすぐ終わったじゃないの~」と、楽観的に考えている方が何名かいらっしゃいます。
もちろん、ご家族の方々で手続きできるのなら問題ありませんし、私たちが出る幕ではないのですが、電話相談を受けた際に何点か気になる点がありましたので、依頼をされるかどうかは別に、「とりあえず、今後の手続きと流れを確認してみませんか?」とご提案。
葬儀以降に発生する手続き、役場での手続き、葬祭費の請求、未支給年金の受け取りの可否、公共料金の支払いや各種契約の解約、遺品整理に賃貸物件の明渡しと、ひとつひとつ確認していきます。
そうした中、打ち合わせ前に事前に故人の室内の状況を確認していたご相談者の方からカメラに収めた室内の状況を見せてもらうと、悪い予感が的中です。
室内の状況はいわゆる「ゴミ屋敷」と呼ばれる状況で、天井に届きそうなくらいのゴミの山。トイレやお風呂なども使用できない状況で汚物も散乱し、明らかに通常の退去費用では収まらないケースです。
もちろん、部屋がゴミ屋敷で原状回復費用が高額になると予想される場合であっても、それを上回る相続財産があれば問題ありません。
しかし、室内から探し出した通帳を見ると残高はそれほど多くはありません。記帳するか残高証明を取得してみないと正確なことはいえませんが、遺品整理と原状回復の費用にはまったく足りない状況と予想されます。
亡くなった弟さんの日頃の生活状況を聞いてみると、最近はあまり親交は無かったようですが、昔は消費者金融からの借入も頻繁に繰り返していたようで、場合によっては借金についても心配しないといけない状況です。
その他、賃貸物件の契約状況やお姉さまが亡くなった際の相続状況なども確認していくうちに、「本当に相続されますか?」という根本的な問題へと立ち戻ることとなりました。
私が訪問した段階では、相続もするし、死後事務もやらないといけない、難しい部分は専門家に依頼しようという感じでしたが、状況を整理していき、今後の必要となる手続きや予算、そして残った遺産の状況を確認していったところ、相続人の方々の考えは「これは相続したら大変なことになるのでは?」という認識へと変わっていきました。
幸い相談の電話も早かったため、故人の財産には遺品整理も含めて何も手を付けていない状況ですので、相続放棄を選択肢に入れることも可能です。
ご家族が実際に相続放棄するのか、敢えて相続して手続きを進めていくのかはご家族の判断に任せることになりますが、ただ単に相続して死後事務を行っていくというだけでは、予想外の債務を負う危険性を知って頂けたことは今後の大きな判断材料にして頂けるかと思います。
本来は死後事務を受任していく立場ではありますが、相続人のことを考えれば依頼内容と正反対とも言える「相続放棄」を提案させて頂くこともあります。
今回のケースは、同じ家族の相続で死後の準備をしっかりしていたお姉さまと、まったく準備しておらず突然に亡くなってしまった弟様のケースで、死後の準備の大切さをまざまざと見せつけるものとなりました。
今回のケースでもわかる通り、離れて暮らす家族にとっては、本人がどういった生活をしており、どのような財産や負債を持っているのかは全くわからないのが普通です。
今回のお姉さまのようにしっかりと死後事務委任契約を第三者と契約しておくのが理想ではありますが、そうでなくても、最低限、銀行の口座や負債の有無など相続人となられる方が判断に迷わないようにメモを残しておくと死後の手続きをする方にとっては大きな手助けとなります。
最近は本屋さんへいけば、エンディングノートのように死後の手続きに必要な事項をまとめた冊子も沢山売っていますので、そうした物を活用すると、何を書いておけば死後の手続きに役立つのかを簡単に整理することができます。
相続や死後の手続き、死後事務委任のご相談は名古屋の死後事務支援協会までどうぞ~。
2021.08.23
家族や親戚に知らせずに葬儀をあげることは可能か?
おはようございます。名古屋の死後事務支援協会代表の谷です。
早い地域だと今週から新学期が開始する学校もあるのですね。8月いっぱいは夏休みかと思っていましたが、この感染が拡大する中での新学期開始は少々心配になります。
小児への感染も増加しているようですので、まずは自己防衛の徹底で家族を守る行動をとっていきましょう。
さてさて、本日も死後事務委任に関するお話しです。先日、所属する士業の団体の勉強会に葬儀業者の代表を招いての勉強会が行われましたので参加してきました。
いろいろと興味深いお話しもあり大変参考になったのですが、その中のお話しで近年の葬儀の際の会葬者の人数のお話しがありました。
もう何年も前から「家族葬」という言葉を聞くようになり、コロナ禍で会葬者の多い葬儀が出来ない状況も合わさって、ここ数年の葬儀の様相はガラッと変わっているそうです。
2017年データーでも3割弱は会葬者20人未満の葬儀だったようで、コロナ禍の状況を考えると今の葬儀は本当に身近な親族だけになっていると思われます。
こうした葬儀の会葬者が減る中で、では反対にどこまで会葬者を減らすことができるのか?と考えたことはありますでしょうか?
最近はゼロ葬という言葉もあるくらいで、もともとの遺骨を持ち帰らないという意味から、葬儀へかける費用や負担を限りなく少なくするという意味にも使用されてきています。
死後事務委任契約のご依頼者の中には、家族や親族がいたとしても「葬儀には誰も呼ばないで欲しい」「家族には知らせずに葬儀を行って欲しい」「家族や親戚には葬儀や納骨が終わってから知らせて欲しい」という希望を持たれている方がけっこういます。
上でいう「葬儀」とは、宗教的儀式の葬儀だけではなく、宗教的儀式を行わない「直葬」なども含んでいるのですが、直葬のような場合であっても、火葬場へ親族が来ることは別段問題はありませんので、そうした火葬場へも来ないようにする為にあえて、死亡通知を葬儀や納骨後に指定される方もいらっしゃいます。
これには様々な理由があり、
①親族や親戚との折り合いが悪い
②相続人として甥や姪がいるが、疎遠なため葬儀に呼ばれても困るだろうと考えてあえて知らせない
③親族や親戚とは良好な関係だが、遠方に住んでおり高齢の体に負担を掛けてまで来てもらわなくてよい
など、親族間の不仲から相手の事を思いやってあえて葬儀には来なくてよいとする内容まで様々です。
では、実際のところ家族や親戚に内緒で葬儀から火葬、埋納骨まで行うことは可能なのでしょうか?結論から言うと「可能」です。
実際に私たちのような死後事務を支援する団体では、依頼者と結んだ「死後事務委任契約」に基づいて、葬儀や納骨などを行っていきますが、契約にあたって、葬儀のプランや誰に通知して誰を呼ぶのか、または誰も呼ばずに葬儀を実施するのかなどを細かく打ち合わせを行い、それを契約書としてまとめます。
そうした契約書の内容に「葬儀は直葬」「親族や知人へは納骨後に通知」などの要望が盛り込まれている場合は、死後事務受任者としては、契約書に記載された通りに死後事務を執行していきますので、依頼者に万が一の事があった場合は親族や親戚には知らせずに葬儀から埋納骨まで終わらせることもあります。
「いや、そうは言っても依頼者が死んだらまずは家族へ連絡が入るでしょ!?」と思われる方も多いのではないでしょうか。
どのような形で亡くなったかにもよりますが、一般的な病気で入院、その後に死亡という流れの場合では、家族へ死亡連絡がいかないということは珍しくありません。
そもそも病院が連絡する相手は誰なのか?というと、依頼者本人が入院する際に入院申込書などに記載した連絡先に病院は連絡します。
病院が患者の家族や親戚の連絡先を当然に知っている訳でありませんので、患者本人が申込書へ記載した連絡先しか病院は知り得ない訳です。
そうした場合に、その連絡先に私たちのような死後事務支援を行う団体の名前が記載されている場合は、病院は家族以外であってもそこしか連絡先がありませんので、患者が死亡した事、患者の遺体の引取り、未払いの治療費の請求などは、入院申込書へ記載されている「身元保証人」や「身元引受人」「入院治療費の支払い者」等へなされることとなります。
つまり、患者本人が亡くなった場合であっても、入院申込書への記載内容によっては、たとえ家族であっても本人の死亡を知らないまま、患者が希望した身元引受人等へ遺体が引渡されることとなります。
そのようなケースですと、そのまま葬儀や火葬、埋納骨と死後事務委任契約書の内容に従って粛々と進められていきますので、依頼者からどのタイミングで家族や親戚に通知をして欲しいという希望がなされているかによって、家族や親戚が依頼者の死亡を知るタイミングは前後することとなります。
依頼者によっては、「誰にも一切通知しないで欲しい」という希望を持たれている方もいますので、そうした場合は、死後事務受任者としては誰にも通知を行うことなく死後事務の執行を終わることもあります。
ただし、依頼者の方に相続人がいる場合は、例え遺言書で「相続人へは一切財産を渡さない」としていた場合であっても、遺言執行者としては相続人へ財産目録等を整えて通知する義務がありますので、死後事務受任者としては通知しなくても、遺言執行者としては通知するということはあります。
この場合であっても、遺言執行者が通知するタイミングは故人の財産をある程度調査した後になるのが普通ですので、依頼者の方が誰にも通知しなくて良いとしていた場合は、葬儀や埋納骨が終了した後に通知がなされるケースがほとんどでしょう。
では、本題に戻って「会葬者はどこまで減らせるのか」というと、実際には喪主だけで十分という結論となります。この喪主も必ずしも親族である必要はありませんので、第三者の死後事務受任者が喪主を務めるのでしたら、親族、親戚等は誰も参加せずに葬儀、火葬、埋納骨まで終えることは可能となります。
死後事務委任契約は基本的には家族や親戚の意向ではなく、本人の希望を大前提で進めていく契約となり、家族や親戚が例え反対の考えを持っていたとしても、契約書の効力によって本人の希望が優先されるのが「死後事務委任契約」となります。
死後事務委任契約は契約書の名前の通り、死後の事務を委任する契約である為、契約の効力が発効した段階では、依頼者本人は死亡しています。
つまり、何か問題が起きた場合であっても後からその内容を本人に確認するということはできませんので、死後事務委任契約書を作る際は事前の打ち合わせが非常に重要となってきます。
トラブルなく死後事務を第三者へ依頼したい場合は死後事務を専門に扱う士業へご相談くださいね。
自分の死後についての強い希望があるようでしたら、死後事務委任契約をご検討ください。ご相談は名古屋の死後事務支援協会までどうぞ~。
2021.08.22
死後事務委任契約と米寿のお祝い?
おはようございます。名古屋の死後事務支援協会代表の谷です。
オリンピックも終わり再び世間はコロナの話題一色となってきましたね。私のところにもワクチン接種の案内が届き幸い掛かりつけの病院で接種が可能でしたので来週にも一回目を接収を行ってきます。
この仕事はどうしても高齢者の方々との打ち合わせが多くなりますので、まずは2回の接種を無事に終えたいと思います。
さてさて、本日は死後事務委任契約の依頼者の方へ行っている安否確認とその際のちょっとした小話についてです。
死後事務支援協会にて死後事務のご依頼を頂いている方へは定期的に安否確認を行っており、依頼者の希望する方法での安否確認を行っております。
今月契約された方は皆さんお若くそのうち3人は全て50代の現役で働かれている方々です。別段持病があるわけでもなく、死後事務を考えなければいけないような差し迫った事情がある方々ではないのですが、コロナ禍ということと、ワクチン接種を予定していることから万が一に備えてという方々です。
そうした若い方々でしたら、死後事務のご依頼を頂いている期間の安否確認は携帯やスマホなどからSMSを利用したメッセージのやりとりで行うことも簡単にできます。
ただ、高齢者の方の中には、そうした機器の操作に不慣れな方は当然おおくいらっしゃいますので、そうした方々へは電話などでの安否確認を実施しているところです。
そうした安否確認を実施している高齢者の方の中に県外にお住まいの方で、今年88歳の米寿を迎えられた方がおり、せっかくでしたので安否確認の電話を誕生日に合わせて入れさせて頂きました。
その方には毎月安否確認の電話入れていますので、日頃からあれやこれや世間話しに花を咲かせているところではありますが、「米寿ですね!」とお祝いを伝えたところ、「よくま~ここまで生きたものだわ」とおっしゃいます。
その方は子供の頃から原因不明の体調不良に悩まされていたのですが、現在は原因も判明し対処も行ったことから日常生活には支障がない状況にまで回復しています。
ただ、原因が判明した際に病院のドクターから言われたのが「あんたこれまで良く生きてたな!」との一言。なかなか辛辣な言葉にも聞こえますが、実際にそれくらい危険な状況を綱渡りで過ごしてきたようなもので、そうした過去の出来事を思い出して漏れ出た言葉が、先の「よくま~ここまで生きたものだわ」に滲み出ていたかに思います。
体調不良の原因は解消しても、それでも88歳の米寿を迎えた方でもありますので、コロナに限らずこの真夏の暑さも大変危険でもありますので、「熱中症などにも気を付けて」と伝えると「あんたも若いからっていって注意を怠ったらあかんよ!今のご時世なにがあるかわからんに」と反対に心配されてしまいました(笑)
医者の不養生ではありませんが、コロナでは若い方も亡くなっていますので、ちょっとした気の緩みでどうなってしまうか分からないご時世でもありますから、死後事務を担う者として、まずは自分の健康を第一に仕事を進めていかないといけないなと、改めて考えさせられる先達からのお言葉です。
8月も終わろうとしていますが、まだまだ暑い時期が続きます。コロナもそうですが、高齢者の方は熱中症も大敵となりますので、無理せずエアコン等の空調を利用して体に負担のないようにお過ごしくださいね。
死後事務のご相談は名古屋の死後事務支援協会までどうぞ~。