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2026.08.29

死後事務実務で起きるサブスク解約妨害の現状

おはようございます。名古屋の死後事務支援協会の谷です。

今回は、消費者庁がサブスクリプションや定期購入などの継続契約における「解約妨害」を法律で禁止する方針を固め、2027年の通常国会に関連法案の提出を目指しているというニュースについて書いていきたいと思います。

(令和8年8月29日日本経済新聞の記事より)

死後事務委任契約では多くのサブスク契約の解約を行う

死後事務委任契約を執行するうえでも問題となるのがこのサブスク契約の解約妨害の問題です。

生前に本人の依頼に基づいて、本人が生前に利用していた各種契約を死後事務委任契約に基づいて解約手続を行っていくのは死後事務委任契約の業務の中でもかなりの比重をしめる大事な業務となります。

主なものとしては、「携帯電話の解約」「クレジットカード」「公共料金の解約停止」「NHK」「定期配達される新聞やお弁当」「自宅で使用しているネット回線」「各種VOD(ビデオ・オン・デマンド)等々。故人の生活スタイルによって様々な契約が存在します。

こうしたご本人が死亡した後に解約しなければいけない各種契約を事前に聴き取りを行い、死亡後に備えておくのが死後事務委任契約となります。

サブスク契約の解約妨害とは何か?

サブスクリプション(定期購入・定額制サービス)の「解約妨害」とは、消費者が一度申し込んだサービスを解約しようとする際、事業者がその手続きを不当に難しくしたり、心理的・時間的な負担をかけて諦めさせようとする行為を指します。近年、Webサービスや通信販売、各種会員制サービスなどで急速に増加し、社会問題化しています。

代表的な解約妨害の手口

  1. 解約ボタンやページの隠蔽(ダークパターン)
    マイページやヘルプ画面の奥深くに解約導線を隠し、検索やサイト内検索を使わなければ到達できないように設計する手口です。

  2. 煩雑な多重プロセスの強要
    解約ボタンを押した後に「本当に解約しますか?」「特典を放棄することになります」「アンケートに答えてください」といった確認・引き止め画面が何重にも表示され、何度も引き留める仕組みです。

  3. 電話手続きへの限定と「繋がらない」状態の放置
    Webからの契約はワンクリックで完了するにもかかわらず、解約時のみ「電話受付のみ」とし、さらにその電話が終日繋がりにくい状態にして手続きを諦めさせる手法です。

  4. 自動音声ガイダンス(IVR)の複雑化・有料化
    電話をかけてもナビダイヤル(0570等)で通話料を負担させられた上、番号入力の選択肢が複雑でオペレーターに繋がるまでに長い時間と費用を消費させるケースです。

  5. 解約可能期間の極端な制限
    「次回更新日の〇日前〜〇日前の3日間のみ受付」など、解約できるタイミングを極端に狭めて実質的に解約しにくくする仕組みです。

    契約時の手続きが簡便であるのに対し、出口(解約)の手続きばかりが著しく困難な設計は「入り口は広く、出口は迷路」と批判されていますね。

相続人の心を折る為に仕掛けらた罠

このサブスク契約の解約妨害は、複雑な解約手続で契約者を困らせているのはもちろんのこと、より深刻な問題となっているのが、相続人からの解約手続です。

私は、死後事務委任契約に基づいて本人からの依頼に基づいて、各種契約の解約業務を行っておりますが、これとは別に、亡くなった方のご遺族からの依頼で故人の契約解除のお手続をすることもよくあります。

この時に問題となるのが、「本人しか知らない情報」です。最近のサブスク契約などは、主にスマホやパソコンからネット経由で契約をしていることがほとんどですよね。

ですので、解約する際もスマホやPCで該当サービスのホームページへ行き、マイページという自分専用のページにログインしたうえで、解約手続に進むというのが一般的かと思います。

サブスク契約の解約妨害の問題は、こうしたマイページへログインした後の解約手続が複雑すぎるという事が問題になっているのですが、相続人からの依頼に基づいて行う契約の解除はより問題が深刻です。

なぜなら、契約者本人は既に死亡しており、マイページへログインするための「契約者ID」や「パスワード」を知っている遺族などはほぼ皆無だからです。

ですので、故人が使用していたパソコンやスマホから解約手続を行おうとしても、そもそもパソコンやスマホにロックが掛かっており、故人のスマホ等からマイページへ行くことができない。

たとえ、スマホ等にロックが掛かっていなかったとしても、ログイン時に求められるパスワードが分からず解約手続に進めないといった状況になってしまいます。

そうなると次に行うのが、ネット解約ではなく電話による解約手続です。しかし、上で示したように電話をしても繋がらない、電話料金だけ嵩んでいく、自動音声に従ってプッシュしていっても人間のオペレータに繋がらず、AIの回答のみで終了されてしまう等、何をどうやっても解約手続まで進めないような、まさに迷路に放り込まれたかのような感じで遺族の心を折にくるトラップがいたるところに張り巡らされているのが実情です。

そのため、ご遺族の中にはこうした迷路から抜け出すことができずに、精根尽き果てた状況で我々のような専門家に解約を依頼するとった状況が続いております。

契約者本人が解約しようとしても難しい契約を、契約者本人しか知りえない情報を知らない遺族が解約するのは非常にハードルが高く、こうした面においても法律で規制してでも遺族から簡便な手続で解約ができる体制を事業者に義務付ける必要があります。

解約妨害と思われる実例の紹介

私も様々な契約の解約手続を行ってきていますが、特に解約妨害として酷いと思われる実例を紹介しておこうと思います。こちらはあるご遺族からの依頼で進めていた個人が自宅で使用されていたネット回線(光電話回線含む)の解約手続についての話しです。

まず、他の契約等と同様に請求書に記載されたお客様サポートと記載された電話番号に電話します。
本人確認を行うために必要な情報として、故人生年月日や契約時の電話番号、IDなどの入力を求められます。

故人が亡くなってから日数が経過していたこともあり、クレジットカード払いになっていた支払いが停止されており、延滞が発生していたようで、自動的に清算に関する案内に切り替わり、また目的に合わせた番号プッシュを求められることになり、いっこうに人間のオペレーターへは繋がりません。

ようやく、番号プッシュ地獄が終わったかと思いきや「只今電話がこみあっています」のお決まりの文句が流れてきて、オペレーターが出るまで待機時間となります。

基本的にこうした解約は「0570」番号のナビダイヤルで案内されますので、電話代は全て解約を希望する側(お客側)の負担となります。

ちなみにナビダイヤルで掛けた場合の料金の目安は下記のような感じとなります。

発信元ごとの30分通話料金目安

発信元の回線通話料単位(改定前)改定前(〜2026年9月)30分間の料金通話料単位(改定後)2026年10月1日以降30分間の料金
スマートフォン・携帯電話11円 / 20秒約 990 円22円 / 30秒約 1,320 円
固定電話(全国一律)9.35円 / 3分約 93.5 円9.35円 / 3分(変更なし)約 93.5 円
IP電話・ひかり電話8.8〜9.35円 / 3分約 88〜93.5 円8.8〜9.35円 / 3分(変更なし)約 88〜93.5 円

固定電話で掛ける場合ならまだしも、携帯電話で解約の手続をしようとしたらとんでもない電話料金が発生することがわかるかと思います。

それでも、30分も待たされることなんてないんじゃないの?と思われるかもしれませんが、30分以上待たされることなんて普通にありますし、30分で繋がるならまだ早いんじゃないかと思うこともしばしばです。

実際にこのネット回線事業者に電話連絡をした際は、オペレーターに繋がるまで1回目は45分、2回目は35分またされました。

(事務所の録音機械に表示された保留時間:オペレーターが出た時点で撮影)

スクリーンショット 2026-08-29 112612

しかも、さらに問題なのがこの35分待たされた2回目の電話が、1回目の電話の際に必要な書類等をメールで送るように指示され、メール送信した際に併せて伝えた第三希望までの連絡希望時間帯を全て無視され、先方から電話が掛かってこなかったために現状を確認するために再度掛けさせられた電話だということです。

第三希望までの時間帯を記載するように求められて、こちらがその時間帯には電話に出られるように待機していたのに電話はかかってこず、また、電話がかかってこないことを伝えるために再度メールを送りましたが、そのメールに対しても返事がなく、しかたなく再度電話を掛けたという流れのため、正直なぜこんな悪意のある手続に対してこちら側が電話料金を負担しなくてはならないのか?という不満が積るばかりの状況です。

電話代の掛からないチャットサポートもあるが、、、

このネット回線事業者の解約にあたっては、電話を掛けた際に「電話料金の負担のないチャットサポートをご利用ください」といった案内が流れます。チャットサポートを利用すれば、ナビダイヤルでの電話の保留時間のように電話代の負担がなくオペレーターのサービスが受けられるようなのですが、果たして、、、、

スクリーンショット 2026-08-29 130941

チャットサポートを開いて、契約者情報を入力して、「契約者死亡のため解約したい」「オペレーターに相談したい」とAI音声に伝えた後がこの画像の通りです。

正確な時間は計っていませんが、10分間隔くらいで同じメッセージが繰り返えされています。恐らく、相談者側が長時間入力しない状況が続くと自動的にチャットが終了するのを防ぐためかと思われますが、そんな事するくらいならオペレーターに繋いでくれと思うばかりですね。

こちらは電話と違って、40分以上経過しても結局オペレーターが対応することはありませんでした。何をサポートするためのチャットなのかまったくわかならいサポートです。

もしかしたら、問い合わせ内容が「新規で契約したい」といった内容なら優先的に繋がる仕様で、解約等の対応は後回しにされているのかもしれませんね。

ここのネット回線事業者ではありませんが、電話回線の解約の際にはそういった対応をしていた事業者が実際にあったと記憶しています。

契約者死亡時の解約は難しくあってはならない

最初にも話した通り、故人の契約を解除する場合は相続人であっても契約の詳細や解約に必要な情報を知らないことが普通です。

それなのに、本人しか知りえない情報を解約時に求めたり、電話での解約をさせないように仕向けるのは消費者保護の観点からは大きく外れているとしか言えません。

死後事務を専門に扱う私から見て事業者に求めるのは、
① 契約者死亡時の専用チャンネルを設けること(高齢者でも迷わず手続可能な体制)
② 委任状や戸籍類、印鑑証明書等の適切な資料を用意している代理人での解約手続の受付

この2点です。たったこの2点のことが現状ではないがしろにされて、事業者の都合によって利用者が翻弄されているのが現状です。

消費者庁の今後の対応については、死後事務を扱う事業者としても大きく期待するところです。

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ご好評につき「ゼロから学べる死後事務委任契約 実務ハンドブック」が重版となりました。重版にあたり、死亡届に関する記述を修正しました。これまで死後事務受任者ではできなかった死亡届について、「家屋管理人」の解釈拡大に伴う変更点について記載しております。

「ゼロから学べる死後事務委任契約 実務ハンドブック」重版出来
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